現代日本のファッション事情:変化する意識と購買行動
現代社会におけるファッションは、単なる装いを超え、個人の価値観やライフスタイルを映し出す鏡となっています。株式会社クロス・マーケティングが2025年5月に全国の18歳から79歳までの男女3,000名を対象に行った「ファッションに関する実態・意識調査」は、消費者のファッションに対する新たな潮流を鮮明に浮き彫りにしました。特に注目すべきは、オンラインでの衣類購入が若年層を中心に急速に普及している点と、実用性を重視する傾向が強まっていることです。
おしゃれへの関心度に見る世代間のギャップ
調査結果によると、「積極的におしゃれをしたい」と答えた人は全体の8%、「ある程度おしゃれをしたい」が38%で、合わせて46%がファッションに関心があることがわかりました。この「積極的におしゃれをしたい」という意向は、年齢が若いほど高い傾向が見られます。一方で、30代では「関心がない」と答える割合が31%に上り、18~29歳や40~50代が20%台であることと比較すると、ファッションへの関心が二極化している可能性が示唆されます。
ファッションの根底にあるのは「TPO」と「快適性」
ファッションや身だしなみに対する考え方では、「化粧やヘアスタイルはその場にふさわしいことが重要」「化粧や身だしなみに気を使うのは大人としての常識」「人からどう見られているかよりも、自分自身が快適でいられる装いをしたい」が上位を占め、これらの意識は年代が上がるほど強まる傾向にありました。また、「自分の体型やスタイルが気になる」という項目も多くの人が選択しており、これは年齢に関わらず共通の悩みであることが明らかになりました。
日常の装いは「シンプル、清潔感、動きやすさ」がキーワード
実際に日頃のおしゃれや身だしなみで心掛けていることとして、「シンプル」と「清潔感」がそれぞれ4割台、そして「動きやすさ」が3割台で上位を占めました。特に60~70代では、これらの実用的な要素への重視度が高いことが特徴的です。過度な装飾よりも、日常使いにおける快適さや機能性が重視される傾向が伺えます。
衣類購入の決め手は「着心地」と「機能性」、そして「ECサイト」の台頭
衣類を購入する際に重視する点では、「着心地・肌ざわり」「動きやすさ」「デザイン」「機能性」「コストパフォーマンス」がトップ5に挙げられました。デザインやコストパフォーマンスは年代による差が少ない一方、着心地や機能性が重視されるのは、前述の「快適性」を求める意識の表れと言えるでしょう。
そして、購入方法においては大きな変化が見られます。全体の購入先は実店舗が62%、ECサイトが38%となっていますが、18~29歳、そして30~40代ではECサイトでの購入が40%台と、約半数を占めています。特に「事前に確認せずにECサイトで購入」する層が若年層で顕著であり、デジタルネイティブ世代の購買行動がファッション市場に与える影響は無視できないものとなっています。
衣類の処分にも世代間の違いが顕著に
衣類の処分方法については、「可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄」が68%と圧倒的多数を占めました。次いで「自治体の資源ごみとして出す」が27%、「古着として販売する」が21%となっています。「資源ごみとして出す」は年代が高いほど、「古着として販売する」は年代が若いほど高くなる傾向にあり、環境意識やリユースに対する価値観の世代間ギャップが浮き彫りになりました。持続可能なファッションへの取り組みが叫ばれる中、現状の衣類廃棄の実態には課題が多く残されていると言えるでしょう。
まとめ:進化するファッション消費と未来への提言
今回の調査から、日本のファッション消費は多様化し、実用性と快適性を重視する方向へと変化していることが明らかになりました。特に、若年層におけるECサイトの利用拡大は、今後ますます加速する可能性を秘めています。また、衣類の処分方法に見られる世代間の意識差は、サステナブルな社会の実現に向けた啓発と行動変容の必要性を示唆しています。ファッション業界は、これらの消費者意識の変化を捉え、よりパーソナルで持続可能な選択肢を提供していくことが求められるでしょう。テクノロジーと意識の進化が交差する現代において、ファッションは常にその最前線に立ち続けています。