かつて昭和の飲み屋街を賑わせていた流しのパフォーマーたちが、令和の時代に新たな進化を迎えています。彼らは今、インバウンド観光に対応し、世界中から訪れる観光客を魅了する努力を本格的に始めました。流しの文化は日本の横丁文化とともに復活し、多くの飲食店を盛り上げてきましたが、現在はその枠を超え、海外からのお客さんに向けたアプローチにシフトしています。
2025年の上半期には、円安や万博の影響で訪日外国人旅行客が過去最多に達する見込みです。この好機を捉え、流しパフォーマーたちは「流しの教習所」と題した講座を開き、海外旅行者にも楽しんでもらえるような文化発信に挑戦しています。2025年5月11日に開催されたこの講座では、海外でも活躍するYAMATO氏が講師を務め、英語での進行や観光客に響く選曲、パフォーマンスの工夫について熱心に指導しました。受講者たちはノートに熱心にメモを取り、その意欲が伝わってきました。
流し業界は着実に成長しており、全日本流し協会が主導する「職業としての流し」を支える制度づくりも進められています。2023年には25会場だった流しパフォーマンスの場が、2024年には33会場、さらに2025年には64会場にまで拡大すると発表されています。この成長スピードは、流し文化の一大ムーブメントを引き起こしています。
そして、流しの未来を語り合う「全日本流し協会2025総会」が今年の7月28日に開催されることが決定しました。この総会では、これまでの活動の報告や今後の展望が共有され、参加メンバー全員が一堂に会して意見交換を行います。
流しの文化の歴史を振り返ると、江戸時代に遡ります。当時、かわら版屋の職業が必要とされ、文字を読むことができない人たちに読み聞かせをする演説師が生まれました。演説師たちは時事ネタを歌に乗せて伝えるようになり、次第に演歌師と呼ばれる存在が登場しました。彼らは飲食店から重宝され、様々な店を巡りながらその歌声を届けました。こうした流れが「流し」という文化の始まりです。明治から昭和にかけて流しは非常に盛んでしたが、カラオケの普及とともに数が減少し、2020年代には飲食店が集まる横丁文化の人気が再燃することで再び流しのアーティストたちが生まれるようになりました。
全日本流し協会の代表理事である岩切大介氏は、「横丁文化が続く限り、流しも100年以上続く文化になる」と話し、その実現に向けて6つの目標を掲げています。これらの目標には文化の再興、全国への普及、地位の向上、適切な税務財務の遂行などが含まれており、流しを文化的な仕事として捉えることで業界全体の地位を高めることを目指しています。
流し業界は進化を続けており、今後の展開が非常に楽しみです。流しのパフォーマーたちが創り出す新たな文化に、ぜひ注目してください。
ライター/酒巻孝正