アートの風土と祈り
2025-06-22 00:31:28

小松美羽とデュポンの対話が織り成すアートの風土と祈り

小松美羽とエマニュエル・デュポンの特別対談



2025年6月20日、スイス・バーゼルで開催された国際アートフェア「Art Basel Basel 2025」において、特別な対談イベントが行われました。このイベントは、GEN DE ARTとVosne-Romanée Culture & Arts Centerが主催し、《Sensing Burgundy:芸術・文化・テロワールの詩的交差点》というタイトルが付けられました。ステージは「xchange Circle」と名付けられ、華やかな雰囲気の中で展開されました。

この特別対談は、GEN DE ARTの編集長、オリビア・マツモトが司会を務め、アーティストの小松美羽と建築家のエマニュエル・デュポンの二人のゲストとの対話が行われました。彼女とのセッションでは、自然との対話や作品を通じた祈りというテーマが掘り下げられました。また、デュポンとの対話ではテロワール、すなわち土地の記憶や精神的な風景についての考察もありました。三者が一堂に会している場ではありましたが、話の流れは一対一の形で進行されていきました。これにより、各自の内面と風土との接点がじっくりと引き出されました。

小松美羽の芸術の響き



対談の前半は、小松美羽の発言が中心となりました。彼女の作品を紹介する映像が上映されると、会場にはまるで儀式のような没入感が漂いました。小松の芸術は、古代日本の信仰や自然霊性に深く結びついており、大英博物館などの国際的な機関でも展示され、文化交流の象徴として評価されています。

「自然の声を聴く」というテーマについて彼女は次のように語りました。「私は瞑想を通じて創作の状態に入ります。描くこと自体が瞑想であり、深い意識に沈んでいると小さな劇場の風景が見えてくる。それが私の作品の出発点です。」

彼女は自らの筆の動きについても言及し、「リズムや繰り返しを意図しているわけではありませんが、集中が極まると自然と同じ動きが続く感覚があります。これは私にとっての“サステナビリティ”です。」

また、エコロジー危機に対する自身の考えについても触れ、7月5日から札幌芸術の森美術館で開催される新個展に言及しました。この展覧会は、北海道の固有種である「エゾオオカミ」に焦点を当てており、絶滅の歴史を振り返るものです。「エゾオオカミは北海道の固有種ですが、人間の影響で絶滅しました。私はアーティストとして自然に残る精霊たちの“代弁者”になりたいと思っています。」

対談の終わりに、彼女は次のように結論づけました。「私たちの間にはどんな宗教にも共通する“祈り”が存在することに気づきました。もしかすると、祈りや絵は人間の普遍的な言語かもしれません。」

建築と風土の哲学:エマニュエル・デュポンの視点



次にエマニュエル・デュポンがその席に着きました。彼はAZCA建築事務所の共同創設者であり、ブルゴーニュを拠点に活動する建築家です。本対談のテーマである風土について、彼は建築が自然や文化、地形の記憶とどう結びついているのかを哲学的に語りました。「2025年はブルゴーニュのユネスコ世界遺産登録から10周年です。このタイミングにおいて人と土地の関係を再考すべき時です。建築は過去の記憶を現在に再生するための媒体です。」

彼が手がけた地域芸術祭「Volcano de Nuits」では、土地、建築、芸術の共生を目指した実験的なプロジェクトが展開されています。また、彼の話は「精神性の継承」についても深く考察されていました。

舞台上の対話が描く風土



この対談は一般的な質疑応答形式ではなく、むしろ穏やかな対話を通じて進行しました。オリビアの問いに応じながら、各登壇者が創作と風土の関係についてじっくり語り合っていきました。作品と精神性、建築と地形、そして人間と土地の記憶が交錯し、文化や物質を越えた“感じる風土”の地図が描かれました。

対談の最後には明確なまとめはなくとも、舞台の照明が徐々にソフトに変わる中で、一つの言葉の重みが胸に響きました。「私たちは皆、この土地の旅人であり、残すことのできるものは記憶と共鳴だけです。」

本イベントは、アートという媒介を通じて、風土や祈りを深く考える機会となりました。


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