東日本大震災伝承活動調査報告書の公開
公益社団法人3.11メモリアルネットワークは、2017年から毎年、東日本大震災に関する伝承活動の調査を実施してきました。このたび、2024年版の調査報告書が完成し、12月10日よりWEB上で公開されました。この報告書は、震災からの学びを後世に伝えるための重要な資料となることを目的としています。
報告書の概要
2024年東日本大震災伝承活動調査報告書は、以下の要点を網羅しています。報告書は148ページの冊子形式で構成されており、詳細な内容が記載されています。内容は、復興基本方針の変遷、発災から14年間の伝承団体および施設数の推移、来訪数のフェーズ別整理、各団体の年別・月別来訪数グラフなど、多岐にわたっています。
目次の紹介
目次は以下の通りです:
1. 2024年東日本大震災震災伝承活動調査報告書の概要
2. 東日本大震災の伝承に関わる方針と現状
3. 震災学習プログラム、震災伝承視察への来訪数推移
4. 震災伝承活動の現状・課題
5. 持続可能な震災伝承活動に向けて
6. 震災伝承活動の可能性
7. おわりに
巻末には、各震災学習プログラム提供団体の基本情報や来訪数推移、各震災伝承施設の基本情報・来館者数推移、参考文献などが収められています。
調査結果のハイライト
震災伝承活動の推移
発災から14年間の震災伝承団体および伝承施設の数や来訪数の推移は、4つのフェーズに分けて整理されています。これにより、震災伝承活動の変遷がわかりやすく示されています。
教訓継承事業の重要性
2011年5月に策定された復興構想7原則には「教訓を次世代に伝承する」という理念が掲げられており、本報告書では、この教訓が復興庁でどのように実施され、予算化されてきたかをまとめています。
未来への不安
驚くべきことに、震災学習プログラム提供団体のうち96%、震災伝承施設の69%が今後の伝承活動の継続に不安を感じていることが明らかになりました。特に、「語り部」が重要な役割を担っており、次世代への伝承には不可欠な人材であるとされています。
予算の不均一性
さらに、岩手・宮城・福島の伝承館の運営予算には大きな差が見られます。宮城県と福島県の予算が10.4倍、宮城県と岩手県では3倍の差があるため、単純比較は困難です。このことは、伝承活動の公平な支援を求める声として挙げられています。
来館数の比較
広島市の平和記念資料館の来訪者数が急増している一方で、東北地域の伝承施設では来訪者数が減少傾向にある現状が報告されています。この差は、伝承活動の価値を伝えるための複数の要因が影響を及ぼしていると考えられます。
今後の取り組み
今後は、南海トラフ地震などの巨大災害の発生が予想される中、震災の経験や教訓を次世代にどのように引き継ぐかが重要なテーマとなります。この報告書は、震災伝承団体や施設だけでなく、防災機関や研究者など、幅広い関心を持つ人々に配布され、利用される予定です。
まとめ
発災から15年が経過し、震災伝承の価値を全国に広めることが求められています。本報告書が多くの人々にとって参考となり、未来の命を守るための取り組みに寄与できることを願っています。2026年1月には、次回の調査結果が公開される予定です。また、特に震災伝承に興味のある方々にとっても、参加の機会が増えることを期待しています。