新たな糖尿病診療の指針
日本糖尿病医療学会の医師たちが推進するコーチングの思想が詰まった一冊『糖尿病診療に活かすコーチング-なぜそのとき行動変容が起こったのか?』が、2026年5月に発行されました。この書籍は、医学書院によって刊行され、監修は石井均氏、編集は同学会の糖尿病医療学コーチング委員会が担当しています。糖尿病治療においては、患者であるPwD(People with Diabetes)が前向きに治療に取り組むことが、成功を収めるための重要な要素とされています。しかし、慢性的な疾患である糖尿病の治療を続けることはしばしば課題となります。そのため、心理的および行動的側面を深く考察することが必要です。
患者に寄り添う医療者のために
本書は、医療者が抱える悩みや課題を解決するためのヒントを提供しています。糖尿病診療においてしばしば直面するストレスや自己嫌悪、コミュニケーションの難しさに対する具体的なアプローチが示されており、かかりつけ医や家族医が長期的な関係を築くための方法を学ぶことができます。
例えば、かかりつけ医が「血糖が高い」と言う患者に何をどう聴いているのか、自分の言葉が患者にどのように受け取られているのかを考えさせる事例が紹介されています。「患者に寄り添うためにはどうするべきか」「どうすれば互いにストレスを感じることなく治療に向き合えるのか」が、本書の根底に流れています。これにより、従来の医学的知識に加えて、患者との信頼関係を築くためのスキルを実践的に学ぶことが可能となります。
スキルを身につける
本書は、コーチングスキル習得の全体像を示し、実際の医療現場でどのように活用できるかを論じています。第3章では「コーチングの三原則」が解説され、他の支援法との違いを強調することで独自のアプローチが見えてきます。そして、第4章にはコーチングのエビデンスが記載され、知識の基盤を構築します。
さらに、実践編では、糖尿病の患者と向き合うための具体的なスキルが解説されています。患者のペースに寄り添いつつ、変化を促す方法や自己基盤を整えるメリットが述べられています。これにより医療者だけでなく、PwD自身の取り組みを尊重しながら、相互に支え合う関係を築くための考え方を学ぶことができます。
さまざまな実践事例
また、第IV部では実際のコーチング事例も取り上げられています。糖尿病教室や外来でのコーチングのシステム化、糖尿病教育入院におけるプログラムなど、多職種が連携することで生まれる新たな治療の形が提案されています。
結語
本書はただの医学書にとどまらず、医療従事者自身の成長を促す内容にもなっています。糖尿病治療において信頼関係を築き、効果的な支援を行うための第一歩として、ぜひ多くの医療者に手にとっていただきたい一冊です。患者との良好な関係を築くことは、単に医療を提供するだけではなく、患者の人生に寄り添うことを意味します。その重要性を体感するために本書をぜひお読みください。