新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科の研究チームが、アスリートのトレーニングによる身体的負荷を毛髪中のストレスホルモンを用いて客観的に評価する新たな手法を発見しました。この研究は、佐藤茉由さん、佐々木美悠さん、越智元太講師、群馬大学の島孟留准教授らの共同作業によって行われました。研究の成果は、2024年8月12日付の欧州の専門誌『European Journal of Applied Physiology』に掲載され、国際的な注目を集めています。
アスリートは日々のトレーニングを通じて身体を鍛えていますが、同じトレーニングをしていても、その効果や負荷は選手によって異なります。このような差異があると、過剰な負荷がかかる「オーバートレーニング」やメンタルヘルス問題、さらには燃え尽き症候群に繋がることがあります。従来、選手やコーチは主に主観的な評価に基づいてトレーニングの負荷を判断していましたが、本研究では、毛髪中に蓄積されるコルチゾールが、トレーニングにおける身体的負荷の変化と関係していることが明らかとなりました。
研究においては、女子大学サッカー選手28名を対象とし、毛髪中のコルチゾール濃度に注目しました。選手たちのトレーニング負荷や精神的な状況を評価するため、練習のオフ期および選手権大会前に毛髪のサンプルを収集しました。この結果、トレーニング負荷量と毛髪中コルチゾールの間に有意な関係が見つかりました。特に、オフ期から大会直前のトレーニング量の変化が反映されていることが確認され、毛髪中のストレスホルモンがトレーニングストレスを評価する指標として有用であることが示されたのです。
この研究成果は、オーバートレーニングやメンタルヘルスの低下を防ぐために非常に重要です。アスリートの健康を守るためには、客観的な評価が求められます。このような新たな評価手法を日常的なトレーニングに取り入れることで、選手やコーチはより安心してトレーニングに取り組むことができ、高い競技力を維持できるようになるでしょう。
本研究は文部科学省および日本学術振興会の助成を受けて行われ、今後のスポーツ科学研究においても重要な進展が期待されます。具体的には、毛髪中コルチゾールを用いた評価が、競技引退後もアスリートの心身の健康を維持するための手助けとなるでしょう。
この新たな評価法により、選手たちは自己のトレーニング状況をより良く理解し、自分の限界を超えないようにトレーニングを調整することが可能になると考えられます。これにより、安全で健康的なスポーツ活動の実現が期待され、今後、多くのアスリートに利する成果が生まれることでしょう。