ショウジョウバエの異種混合集団で「インフルエンサー」確認
千葉大学大学院融合理工学府の浜道凱也氏と、同じく大学院理学研究院の高橋佑磨教授の研究チームが、異なる種が混在する集団において、行動の同調がどのように起こるのかを探求しました。特に、特定の種であるタカハシショウジョウバエが、自らの行動変化をほとんど伴わずに、他の種の活動性を大きく引き上げる役割を果たす「インフルエンサー」として機能することが明らかになりました。
研究の背景
自然界では、異なる種が一つの場所に集まり、「混群」を形成することが一般的です。このような集団では、個体同士の相互作用による「同調行動」が観察され、これは生態系における情報の共有や捕食者からの回避といった重要な役割を担います。しかし、これまでの研究は主に単一種に焦点を当てた報告が多く、異なる種が共存する場合の行動の影響については十分な理解が得られていませんでした。
研究成果のポイント
1. 異種間同調の確認
本研究では、エサとなる資源に偶然集まる「一時的な集団」においても、異なる種同士の行動が一致し、集団全体の特性が形成されることが初めて確認されました。この結果は、動物行動学における理解を深める上で貴重なものであり、異なる種間の相互作用がどのように展開されるのかを示しています。
2. 非対称な行動の収束
従来、集団内での行動の類似性は個体同士の歩み寄りによって生じると考えられていましたが、本研究では、「影響力の強い種」が一方的にその影響を周囲に及ぼす非対称な仕組みを特定しました。これは、異種間での行動調整が複雑なメカニズムを持っていることを示しています。
3. 特定の「インフルエンサー」
タカハシショウジョウバエは、自身の活動性をほとんど変えずに、他の種、特にキハダショウジョウバエの活性を大きく引き上げる強力なインフルエンサーとして機能します。この発見は、個々の種の行動が他種とどのように相互作用するのかという新しい視点を提供します。
今後の展望
浜道氏と高橋教授は、今回の研究が生物の行動特性が遺伝的要因だけでなく、地域社会に共存する他の種との関係性によって形成されることを意味していると伝えています。特に、外来種の侵入や特定の種が絶滅することが、周囲の生態系や他種の行動に及ぼす影響についても警鐘を鳴らしているのです。これにより、今後の研究では「食う・食われる」「競争」以外の観点から、種間の相互作用を探求し、野生動物の行動戦略の理解を深める機会となることでしょう。
用語解説
- - 異種間同調:異なる種の個体が周囲の個体の行動に合わせる現象のこと。
論文情報
- - タイトル:Interspecific conformity and asymmetric behavioral convergence in Drosophila
- - 著者:Kaiya Hamamichi and Yuma Takahashi
- - 雑誌名:Ecology and Evolution
- - DOI:10.1002/ece3.73149
研究プロジェクトについて
この研究は、千葉大学の「全方位・挑戦的融合イノベーター博士人材養成プロジェクト」、科研費(22H05646、23H03840)および2023年度の笹川研究助成金を受けて実施されました。研究に協力した全ての組織に感謝の意を表します。