持続可能な航空燃料を支える家庭用廃食用油回収の取り組み
日本の脱炭素社会の実現に向け、注目を集める取り組みの一つが、持続可能な航空燃料(SAF)を生成するための重要な原料、廃食用油の回収です。野村不動産ホールディングス株式会社が展開するこのプロジェクトは、家庭から排出される廃食用油の効率的な回収を目的としています。
1. 家庭からの廃食用油の現状
家庭から排出される廃食用油は、年間約10万トンとされておりますが、その回収量はわずか4千トン、回収率は4%に留まっています。多くの家庭では使用済みの食用油を堅固な物質にする凝固剤等を使って処理し、資源としての再利用が進んでいないのが実情です。このような取り組みは手間がかかり、家庭からの回収は非常に難しい状況です。
2. 国や自治体の取り組み
国や東京都でも廃食用油の回収促進に向けた取り組みが進行中です。「循環経済への移行加速化パッケージ」を通じ、廃食用油の有効利用を推進。東京都の“Fry to Fly Project”は、家庭や店舗からの廃食用油を利用したSAFのサプライチェーン構築を目指し、様々な啓発活動や回収事業を展開しています。これらの取り組みには民間企業の協力が不可欠です。
3. 野村不動産の取り組み
このような背景を受け、野村不動産パートナーズが管理する首都圏のマンションにおいて2024年から家庭用廃食用油の回収を開始します。このプロジェクトは、マンションの管理が一体化されている特性を活かし、入居者が簡単に廃食用油を回収できる仕組みを提供するものです。具体的には、マンション内に専用の回収ボックスを設置し、入居者が気軽に廃食用油を預けることができるようにします。
2024年には安全性等を確認するための実証試験が行われ、その結果を受けて2025年10月から順次、8物件への導入を進めていく予定です。これにより、入居者が環境に優しい行動に参加しやすくなり、持続可能な社会の実現に寄与することを目指しています。
4. 期待される効果
この取り組みが実現すれば、効率的に廃食用油を回収し、これをバイオディーゼル燃料や航空燃料として再利用することが可能になります。また、地域住民の意識向上や、環境負荷の軽減への貢献も期待できます。廃食用油は再利用することで、資源の循環利用という面でも環境保全の一環となります。特に持続可能な航空燃料の原料としての利用が進むことで、航空業界の炭素排出削減にも寄与できるのです。
今後は、マンションの管理組合への提案を進め、さらなる参加促進を図ります。野村不動産はこのような意義ある取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に向けた一歩を踏み出すことになります。