Z世代の短時間型商業施設利用と滞在延長の要素
近年、商業施設の利用スタイルが変化しています。特にZ世代(18〜24歳)の利用スタイルは“短時間・効率型”が主流となっており、この傾向を背景に、ポップアップストアや推しイベントがどのようにその利用時間を延ばす鍵となるのかを解説します。
調査概要
株式会社カウンターワークスと早稲田大学ショッピングモール研究会が共同で実施した「Z世代の商業施設に関する実態調査」では、1都3県に在住する497名を対象に商業施設に関する実態が明らかにされました。この調査結果によると、Z世代の70%以上が月1回以上商業施設を利用し、平均滞在時間は「1時間前後」が最多という結果が出ています。
短時間・目的達成型の行動傾向
Z世代は商業施設において短時間での目的達成を重視する傾向が強く、買い物や飲食の目的以上に、「ポップアップストア」が長時間滞在を促す要因として機能していることが明らかになりました。特に、同伴による来館が全体の60%以上と高い数字が示すように、誰かと一緒に行くことがこの傾向を助長していると言えます。
滞在時間を伸ばす要因
調査からは、来館意欲を高める主要な要素として「施設の雰囲気や内装が心地よい」との回答が42%を占めており、その後に「推しイベント・コラボ企画」や「期間限定のイベント・ショップ」が続きます。「今しか体験できない特別感」が、Z世代の商業施設訪問の強い動機となっているのです。
SNS影響と共有志向
Z世代はSNSでの発信も活発です。調査では、41%が来館後にSNSに投稿したことがあると回答しており、共有したくなる体験を求める傾向が見受けられます。このような行動は、ポップアップイベントや特別な体験と結びついているため、施設運営者にとってはそれらを策定し、共有したくなる瞬間を創出することが求められます。
快適で共感性のある商業施設
商業施設に求められる新しい機能としては「休憩・作業スペース」や「モバイルオーダー」が上位に挙がります。Z世代は、利便性を求めるだけでなく、快適さや共感性に重きを置いていることがわかります。これに加え、「SNS映えスポット」の存在も重要視されているため、これらの機能を充実させる必要があります。
業界の見解
調査を行ったカウンターワークスのCEO、三瓶直樹氏は、「Z世代にとって、商業施設は単なる消費の場ではなく、体験の場でもある」と指摘しています。また、早稲田大学の坂部匠音氏も、「効率重視の行動志向と非日常的な体験価値への関心が相反しているように見えるが、それはZ世代が日常に疲れている証拠とも考えられる」と述べています。
このように、Z世代の商業施設利用は、効率性と体験価値の両方を重視した新しいスタイルを確立しているのです。施設運営者は、これらのトレンドを踏まえ、同伴来館やSNSでの共有体験を促進するための戦略を立てることが必要です。そして、アナログとデジタルの境界をなくし、次世代世代に合った商業施設を提供することが求められています。