大阪ガスとJR西日本「強風予測システム」の導入
大阪ガス株式会社と西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は、2019年から始まった共同研究の成果として、湖西線において強風予測システムの導入を2025年2月から開始することを発表しました。この新たなシステムは、気象予測技術とAI技術を活用し、高精度な強風予測を実現することが期待されています。
湖西線の特性と強風の影響
湖西線は、琵琶湖の北西に位置する比良山系から強風「比良おろし」が吹き下ろし、急な運転取り止めによる長時間の立ち往生を未然に防ぐ必要がある地域です。JR西日本ではこれまで、強風の予測に基づいて特急サンダーバードの迂回運転や普通列車の運転見合わせを行ってきましたが、強風予測の精度向上が求められていました。
この背景から、大阪ガスとJR西日本が連携し、強風予測システムの開発を進めてきたのです。
AI技術を活用した新システムの概要
新たに導入される強風予測システムは、大阪ガスが提供する高解像度の気象データを基に、JR西日本が開発したAIモデルを活用して解析します。このシステムは、湖西線沿線の風速や風向きなどを24時間先まで予測し、具体的な運行計画の判断を可能にします。
システムの導入により、従来の予測手法に比べて約40%の空振り率改善が実現される見込みです。この成果は、より正確な運行計画を支え、迂回運転や運休を減少させることで、利用者の利便性を高めることになります。
試験導入の実績と今後の展望
湖西線での試験導入結果によれば、強風予測に伴う迂回運転を実施したものの、実際には強風が発生しなかったケースが大幅に減少しました。これにより、特急サンダーバードの不必要な迂回運転が避けられることが期待されています。特に、近江舞子駅から近江塩津駅にかけての区間で、より詳細な強風の予測が可能になることが重要です。
さらに、大阪ガスが開発した気象予測技術は、地形に影響を受けやすい地域においても2.2kmメッシュ単位での予測を実行できるため、高精度のデータに基づく運行改善が進むでしょう。
大阪ガスの取り組み
大阪ガスは、2008年から気象予測技術の研究に着手し、電力事業を中心に社内の様々な業務に応用してきました。2018年には気象庁から気象予報業務の許可を取得し、社外向けに予測結果を提供する体制を整えています。これにより、地方自治体や企業と連携した実証実験も行われています。
総括
この新システムの導入により、大阪ガスとJR西日本は、湖西線を利用する全ての乗客にとっての安全性と利便性の向上を図ることが期待されています。気象技術の進化とAIの融合がもたらす効果は、今後の鉄道運行を変革するかもしれません。新しい強風予測システムの成果に期待が寄せられています。