海外赴任者の税務課題
2024-12-19 16:35:25
海外赴任者関連の税務対策における重要な課題を考察する
海外赴任者関連の税務対策における重要な課題を考察する
EY税理士法人が実施した「第7回モビリティサーベイ」の結果が発表され、日本企業における海外赴任者の税務対策の実態が明らかになりました。この調査では、国内外の200社以上を対象に、税務実態について詳しく分析が行われました。
調査結果の概要
調査は2024年9月から10月にかけて、海外赴任者に関する税務のコスト負担や管理体制について行われ、240名の他企業からの回答が収集されました。主な調査項目には、コスト負担、個人所得税の管理、みなし税、夫婦合算申告、退職金課税などが含まれています。
コスト負担と税務リスク
調査によると、海外赴任者のコストは「出向元が一部負担」とする企業が34%に上り、多くの企業が出向者の給与水準の差を理由にコストを負担しています。しかし、39%の企業が税務調査でコスト負担に関する指摘を受けており、「現地法人負担が必要」との指摘が多く寄せられました。また、海外での給与水準の上昇も影響し、適正な負担額の検証が常に求められています。
所得税と申告漏れ
現地の個人所得税は多くの企業が現地法人に任せていますが、19%が申告漏れを経験しています。特に課税範囲の誤りや、日本からの給与が未申告とされるケースが目立っています。このようなリスクを軽減するため、企業は現地の税務状況を把握しておく必要があります。
みなし税の精算
みなし税に関しては、大多数が給与から控除していますが、年間での精算は30%以下という結果が出ました。グローバルな視点では年に一度の精算が推奨されており、特に日系企業でもその考えが浸透しつつあります。
夫婦合算申告制度の活用
夫婦合算申告制度の利用状況は、「現地任せ」が42%を占めており、企業によって利用方針が異なることがわかります。近年は赴任者の配偶者が現地で働くケースも増えているため、方針の見直しが求められています。
個人的収入の課税
個人的な収入に対する課税については、70%の企業が明文化された規程を持っていないことが明らかになりました。このため、企業内部で税金負担に関するルールを決定しておらず、個別のケースごとに判断されている実態があります。
出国税に関する懸念
特に出国税については、半数以上がルールを設けておらず、個別の判断に依存しています。今後、国外転出時に多額の資産を有する赴任者が増えれば、この問題への注意も必要不可欠です。
退職金の課税
退職金に関しては、自己都合退職の場合と会社都合退職の場合で税負担の有無に差があることが分かりました。この点についても、企業内での合意形成が重要です。
税務対策の重要性
EY税理士法人の藤井恵パートナーによると、海外赴任者に対する適切な税務対策がなされていない企業が多いのが現状であり、このままでは日本国内外での追徴課税リスクが高まる可能性があります。特に、税務調査での指摘があるまで申告漏れに気付かないケースも多く、企業として早期にリスクを可視化し、管理体制を見直す必要があります。
結論
海外赴任者関連の税務対策は、多くの企業においてまだまだ不十分な状況です。本社の経営層がこの問題に関心を持ち、リスク管理の一環として適切な施策を講じることが急務です。日本企業が海外での成功を収めるためには、税務リスクへの正しい理解と対策を講じることが不可欠です。
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EY Japan
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