電通総研と同志社大学が発表した「第8回世界価値観調査 日本版」の結果
2024年7月から8月にかけて実施された「第8回世界価値観調査 日本版」の結果が、電通総研と同志社大学の共同研究から発表されました。この調査は、政治、経済、労働、教育、家族といったさまざまな領域における日本人の価値観の変化を探るものです。この国際的な調査は、1981年から開始されたもので、現時点で約120ヵ国・地域で実施されています。
調査の概要
調査対象は全国の18歳から79歳までの男女1,272名で、約70問228項目に対する意識を分析しました。調査を通じて、次のような重要な傾向が浮かび上がっています。
1. 自分の人生を自由に動かせるとの意識が増加
調査によると、「自分の人生を自由にコントロールできる」と感じている人の割合が68.9%に達しました。この数値は前回調査に比べて大幅に増加しており、自分の人生を自由に動かせるという意識が高まっていることが分かります。
2. 仕事の重要度が低下、余暇の価値が上昇
一方で、仕事の重要度は78.5%に減少し、1990年以降で最も低い水準です。その反面、余暇時間は91.6%と、こちらは1990年以降の最高値を記録しました。仕事と余暇の優先順位が逆転する傾向が明確です。
3. 経済成長と雇用の重視が高まり、環境保護と同等の関心
経済成長を重視する意見は31.8%に上昇し、環境保護を重視する考えともほぼ同じ水準に達しました。この傾向は、日本人が社会的・経済的課題に対して真剣に向き合っていることを示しています。
4. 日本の文化・芸術に対する期待と経済競争力への懸念
文化・芸術に関する評価は良好で44.5%が「良い」と回答したものの、経済競争力や国際的な政治力については悪化を懸念する声が多数集まりました。
5. 社会変革への期待感
66.6%の回答者が現状の社会に対して「社会の大変革が必要」だとし、助け合いや協力を重視する姿勢が表れています。この点は、今後の日本社会がどのように変化していくべきかを考える上で重要です。
6. 世界との関係を強化する必要性
調査では、アジアやヨーロッパなどとの関係強化を求める意識が高まっており、日本が国際社会でどのような役割を果たすべきかについても多くの検討がなされていることが明らかになりました。
7. 科学技術への期待と不安
さらに、64.8%が科学技術によって「世界は良くなっている」と感じている一方で、10.2ポイント増の30.3%が「悪影響を及ぼしている」と懸念しています。これは、急速に進化するテクノロジーに対する期待と不安が同時に存在していることを反映しています。
今後の展望
今回の調査は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた生活様式の変化が人々の意識に影響を与えた結果であると考えられます。特に、自由に動かせる意識が高まった背景には、パンデミックによる制限が解除されたことがあるかもしれません。
今後、日本人の価値観がさらにどのように変わっていくのか、またそれが社会のあり方にどのように影響を与えるのか、注目に値します。電通総研と同志社大学は、これからもこの動向を追い続け、その結果をあらゆるステークホルダーとともに共有していく姿勢を示しています。