千葉大学とIGNITIONが共同でオタネニンジンの栽培技術を進化させる

千葉大学とIGNITIONの共同研究が注目

千葉県袖ケ浦市に本拠を置く株式会社IGNITIONと、千葉市の千葉大学が共同で「オタネニンジンのアクアポニックス栽培技術に関する研究」を開始しました。この取り組みは、国内で薬用人参として知られるオタネニンジンの種子供給が減少している現状を受けてのものであり、医薬品や健康食品の安定供給を目指すものです。

オタネニンジンの現状と課題

1980年代以降、オタネニンジンの国内栽培は急速に減少し、2020年には栽培農家数が昭和55年の約18分の1、栽培面積は約42分の1にまで落ち込みました。このままでは国産のオタネニンジン供給がほぼ輸入に頼らざるを得ない状況となっています。

さらに、オタネニンジンは栽培から収穫まで4〜6年を要し、技術的にも高度な知識が求められるため、新規の農家の参入が難しいとも言われています。これに加え、漢方医療や生薬産業への影響も大きく、輸入価格の高騰により国内の医療機関が良質な原材料を確保できない問題が深刻化しています。最近では中国からの輸入依存が続いており、国家安全保障の観点からもこの問題への対策が求められています。

共同研究の目的と方法

本研究では、アクアポニックスという循環型農法を活用してオタネニンジンの効率的な種子生産と苗の発芽を実現しようとしています。具体的には、持続的かつ安定的な水質管理を行い、発芽率を向上させる技術を確立します。

室内やハウス環境でアクアポニックスを活用することで、気候変動の影響を受けにくくし、栽培に伴う様々なリスクを減免することが可能です。また、安定した地元での高品質なオタネニンジンの供給が実現すれば、漢方医療の安定供給にも寄与することが期待されます。

地域活性化と新たなビジネスモデル

この研究成果を基に、オタネニンジンの生産モデルが確立され、地域農業に新しい活路を提供することが期待されます。特に、高齢化や後継者不足に苦しむ地域に新たなビジネスの機会を提供し、農業における新規参入者を促進する方向性も示唆されています。

研究計画と期待される成果

研究計画には、オタネニンジンの栽培技術開発や安定供給に向けたバイオ技術の適用、データ解析を通じた実用化戦略の構築が含まれています。IGNITIONは、アクアポニックスの運用・管理システムの開発を行い、研究成果の社会実装にも携わります。

高い発芽率を実現することで、国内で品質の高いオタネニンジン苗を供給できるようになり、国際競争力の強化や新しい市場開拓の道も開かれることが期待されています。これにより、日本の農業のみならず、健康食品市場への新たな貢献が見込まれています。

今後、この取り組みが地域活性化や農業の革新につながることが強く期待されています。