日本初の成功事例
日本において、移植した卵巣から得た卵子による妊娠と出産が実現しました。この成果は、学校法人聖路加国際大学聖路加国際病院の医師たちの研究チームによって行われ、メディカルパークみなとみらいやリプロダクションクリニック大阪が共同で関与しています。
悪性腫瘍と早発卵巣不全の課題
今回の成功は、悪性腫瘍の治療により早発卵巣不全(POI)となった二人の若い女性に対するものです。治療の前に、これらの患者から摘出された片側の卵巣組織が凍結保存され、その後、長い治療と経過観察を経て、無事に寛解されました。しかしながら、患者はPOIという状態にあり、閉経していました。そこで、保存した卵巣組織を体内に移植し、卵巣機能を回復させることに成功したのです。
画期的な「サーキュラー・ストリング法」
移植には新たに開発された「サーキュラー・ストリング法」が用いられています。この方法では、卵巣組織を数珠状に並べ、特殊な腹膜ポケット内に配置することで、組織同士の重なりや血流障害を最小限に抑える工夫が施されています。これにより、卵巣機能が無事に回復し、月経が再開しました。
その後、体外受精を行い、移植された卵巣から得た卵子により妊娠が成立したのです。妊娠に至ったということは、移植後に卵巣機能が回復し、再び妊孕性が確保されたことを意味します。これは、日本における画期的な報告であり、特に若年がん患者にとっての新たな希望となります。
女性のライフプランを支える新たな選択肢
この業績は、早発卵巣不全の課題に直面している女性に対し、妊孕性温存を可能にする新たな選択肢を提供するものです。がん治療を受けた女性は、治療と将来の妊娠という、ライフプランの両立ができる可能性を持つこととなります。
今後の展望
この成果は、2025年12月8日付の国際ジャーナル「Climacterics」に掲載されており、今後の研究や実用化が期待されます。がん治療後の女性たちにとって、治療の進展は喜ばしいニュースとして響くことでしょう。また、卵巣移植が妊娠に与える影響についての研究も進むことが期待され、さらに多くの患者に新たな選択肢を提供することが目指されています。
まとめ
悪性腫瘍治療による早発卵巣不全に対する治療法が進化したことは、多くの女性にとって朗報です。今後、聖路加国際病院と提携機関がこの技術を発展させ、より多くの患者が新たな希望を見出せるようになることが望まれます。