企業が直面するAI時代のサイバー脅威とその対策の現状について

AI時代におけるサイバー攻撃と企業の課題

Kasperskyが行った最新の調査では、世界中の企業が直面しているサイバー脅威、特に人工知能（AI）を使用したサイバー攻撃が増加していることが浮き彫りになりました。この調査に参加した企業の76%が、過去1年間に自社が受けたサイバー攻撃の件数が増えたと回答しており、特に日本では73%に達しています。さらに、攻撃にAIが関わっている可能性を感じている企業は46%に上り、日本の回答者では34%が同様の懸念を示しました。これらの結果から、AIがもたらすサイバー脅威に対する認識が広がっていることが伺えます。

本調査により、AIがサイバー犯罪者による攻撃手法を進化させる一因となっていることも明らかになりました。AIを駆使した詐欺やフィッシングメッセージの作成が実現可能となり、従来の攻撃方法に比べて、より高度な手法が次々と生まれているのです。

課題に直面する企業

調査対象となった中小企業と大企業のITセキュリティ担当者に、AIを用いたサイバー攻撃に対して自社を守るための課題を探る質問が行われました。その結果、過去1年間の攻撃件数に関する不安が高まっている一方で、企業は有効な対策が整っていないという事実が明らかになりました。具体的には、外部のサイバーセキュリティ専門家の支援を受けていない、または受けられない企業が56%（日本では68%）、IT部門の増員が行われていない、またはできない企業が54%（同71%）、高度な専門知識を持った人材が不足している企業が49%（同70%）という結果となりました。

これらの数字は、企業が必要な対策を講じていないという深刻な現状を示しています。多くの企業がアクションを取るべきだと認識しながらも、その実行に移すためのリソースや専門知識が不足しています。特に、サイバーセキュリティの状況が急速に変化している中、自社のセキュリティ体制が不十分であることを認識している担当者たちが多いことが課題となります。

企業が必要とする対策

企業のセキュリティ戦略を見直す必要性から、従業員トレーニングの定期的な実施が92%（日本は82%）の回答者に支持されており、高度な専門知識を持つ人材の確保も91%（同81%）が重要視しています。また、外部の専門家からの支援を受けることが90%（同91%）の回答者にとって重要となっています。

意外なことにこれらのニーズが高まりつつあるにも関わらず、実際の人材確保や教育プログラムが不足していることも示されています。対策の必要性を認識しながらも、実行には至らないというギャップが存在しているのです。

サイバー犯罪者の組織化と攻撃手法の進化

Kasperskyのオレグ・ゴロベッツ氏は、「サイバーセキュリティの課題は複雑化しており、企業は現行の対策が十分かを見直す必要がある」と警鐘を鳴らしています。再び拡大を見せるランサムウェア攻撃や、AIを使った策略は企業の意思決定者にとって難題であり、相手の手口も洗練されています。

特にAIの普及によって、サイバー犯罪者は平成の情報量を元に精緻な攻撃を行うことができるようになっています。攻撃者による組織化が進み、連携が強化された結果、未だ力のない小規模な犯罪グループでさえ、手軽に攻撃を仕掛けられる状況が生まれています。これにより、セキュリティ面でのリスクが一層深刻化しているのが現状です。

理想のセキュリティ体制へ向けて

企業は、AIのリスクを軽減するためにも、強固なセキュリティ体制の整備が求められています。XDR（Extended Detection and Response）を活用した多層的なセキュリティソリューションを導入し、社内外の専門知識を融合させることで脅威に対抗する力を強化することが必要です。加えて、サイバーセキュリティの基礎を理解した上で安全にAIを活用するための教育も重要なポイントとなります。

企業は今後、AI技術を正しく安全に活用しながら、サイバー攻撃からの防御を一層強化する必要があります。AIの必要な側面を理解し、その利用方法を模索する動きが求められています。これにより、企業が持つ重要な資産を守ると共に、変わりゆくサイバー環境に適応し続けることが可能となるでしょう。