株式会社Spakonaと核融合科学研究所の協力で進化する核融合プラズマの安定化
株式会社Spakona(代表取締役:河﨑 太郎)は、自然科学研究機構核融合科学研究所(NIFS)と連携し、核融合プラズマの安定化に向けたAI制御技術の実証実験を行いました。これは、プラズマが不安定になり消失する放射崩壊の予測をAIに行わせ、その可能性を探るものであり、研究成果が期待されます。
共同研究の意義
現在、日本は2025年に改定された「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」に基づき、2030年代の発電実証を目指しています。核融合エネルギーは、安全でクリーンな次世代エネルギーとして特に注目されており、CO₂を排出しない点と、燃料の重水素が海水から得られるため、持続可能な社会の実現に貢献します。しかし、1億度を超えるプラズマを安定的に維持することが難しく、放射崩壊と呼ばれる現象がその大きな障害となることがあります。
この課題を克服するため、SpakonaのAIエンジニアとNIFSの研究者チームが結成され、AIを用いた放射崩壊の予測と制御に取り組みました。
AIによる放射崩壊予測技術
研究チームは、プラズマの状態を監視し、放射崩壊の前兆を捉えられるAIモデルを構築しました。これはNIFSの大型ヘリカル装置(LHD)が蓄積してきた実験データベースをもとにし、AIがリアルタイムで電子温度や電子密度、不純物発光強度などのデータを分析して放射崩壊の発生前に予測するものです。
AIはLHDの制御システムと接続され、放射崩壊を予測した際に自動で制御信号を発信し、リアルタイムでの外部制御が行える仕組みを築き上げました。
実証実験のプロセス
実証実験では、AIが放射崩壊の兆候を200ミリ秒以上前に捉え、制御信号を送信することで崩壊を抑制できるかどうかを試みました。主に以下の2つの側面が試験されました。
1.
予測性能:AIが放射崩壊発生前に早期に兆候を捉える能力の確認。
2.
プラズマの安定化:AI制御によるプラズマの安定維持の試行。
このような成果を得ることができたのは、長年にわたり整備された実験データベースや制御基盤があったからこそです。実装にはわずか1週間しかかからず、研究の迅速化が実現しました。
未来への展望
今後の解析を進めながら、AI技術の核融合炉運用における有効性を強調し、更なる発展が期待されます。AIエンジニアと核融合研究者との協力により、短期間での実証実験実施が可能となりました。放射崩壊の予測と回避に関する研究は、今後も核融合分野において重要な役割を果たすでしょう。
今回の研究は、AIが単なる解析ツールではなく、将来的には核融合炉運転の“操縦者”としての機能を果たす可能性を示唆しています。AIによる制御の精度や安定性が向上することで、日本の核融合原型炉の実現に向けた新たな技術革新が進むことが期待されます。
様々な視点からの応援
このプロジェクトに対し、研究者たちから高い期待と感謝の声が寄せられています。NIFSの教授である横山雅之氏は、産学協力を通じての実証実験が非常に価値のあるものであると語り、若手人材の育成にも寄与したとしています。AIによる制御の役割拡大を目指すSpakonaの取り組みが、科学と工学の新たな境界を開くことに期待が寄せられています。
AI技術の進化に伴い、様々な分野に応用される可能性も広がる中、今後の展開が楽しみです。