チヨダサーキュラーせっこうボードの意義と挑戦
チヨダウーテ株式会社(三重県四日市市)が開発した「チヨダサーキュラーせっこうボード」が、住宅業界で注目されています。この建材は、完全に廃石膏ボード由来のリサイクル素材を100%使用しており、環境負荷を最小限に抑えることを目指しています。特に、株式会社アーキテクト・ディベロッパー(ADI)が計画している新築集合住宅に採用されたことは、業界内でも顕著な動きといえるでしょう。
このボードの最大の特長は、その製造過程における再生可能エネルギーの活用です。チヨダウーテは、製造において再生可能エネルギーを100%利用し、カーボンニュートラルを達成しています。この時代において、環境性能が求められる中で、こうした取り組みは大きな評価を受けています。
社会的背景
日本国内では、年間約400万トンの石膏ボードが使用されていますが、今後は解体工事や改修工事からの廃棄物が増加することが予想されています。国立環境研究所の推計によると、数年後には廃石膏ボードの排出量が生産量に並ぶ見込みです。
現在、石膏ボードの原料の中で回収石膏が占める割合は約10%と低く、新築工事からの廃材でも60〜70%ほどが再資源化されています。しかし解体工事からの廃石膏ボードは、わずか6%しか再利用されていません。この背景には、リサイクル施設の不足や解体時の分別の難しさが影響しています。
このような問題に対処するため、「チヨダサーキュラーせっこうボード」は、廃石膏を100%原料とし、製造工程で再生可能エネルギーを用いることで、環境問題の解決に向けた期待が寄せられています。
製品の特徴
このボードの設計には、いくつかの魅力的な特徴があります。まず、防火性や遮音性、施工性は従来の石膏ボードと同様に保持しつつ、カーボンニュートラルの製造方法を採用しています。また、環境認証としてSuMPO EPDやエコマーク認証を取得しており、LEEDやCASBEEなどの評価にも適合しています。
さらに、2024年度のグッドデザイン賞にも選ばれており、その外観と機能が高く評価されています。これに加え、ADIの試算によると、この製品を使用することで、施工フェーズで約8.8トンのCO₂を削減することが可能です。この数字は非常に意味のあるものであり、持続可能な建築を実現するための一助となるでしょう。
循環型社会の実現に向けて
「チヨダサーキュラーせっこうボード」は、解体工事における使用済み廃石膏ボードを回収・再生利用し、循環サイクルを構築しています。これにより、資材循環を完結させ、持続可能な社会の構築に貢献しています。
チヨダウーテは、持続可能性を企業の中心課題の一つとし、完全リサイクル可能な世界を目指し「CHIYODA VISION ZERO」という独自の取り組みを進めています。今後も、製品技術の改善と新しい技術の開発を行い、環境負荷の低減に努めていく方針です。
このような取り組みを通じて、私たちは未来の建築業界における新たなスタンダードを創造し、次世代に持続可能な社会を引き継いでいく責任があると考えています。