デジタル資産の見えない相続リスク
近年、デジタル金融資産の浸透が進む中、株式会社GOODREIが行った調査によると、50代の急逝に伴い、年間約249億円相当のデジタル資産が「相続されずに消失する」可能性があることが判明しました。実際に、急逝した50代一人当たりのデジタル資産の平均相続不能額は約48万円にのぼり、これにはネット銀行、オンライン証券、仮想通貨が含まれます。そのニュアンスや背景を詳しく見ていきましょう。
デジタル金融資産がもたらす新たなリスク
デジタル資産の特性
デジタル金融資産は、現物の通帳や郵送物がないため、所有者の急逝時に遺族がその存在に気付くことが難しいという特性があります。ネット銀行やオンライン証券、仮想通貨など、すべてが厳重に管理されたIDやパスワードによってアクセスされるため、相続手続きが迅速に行えないケースが増えています。
GOODREIの過去の調査によれば、故人のデジタル金融資産を生前に知っていた遺族は45%に対し、残りの半数以上は利用していたサービスさえ理解していなかったという結果が出ています。このように、デジタル金融資産は相続時に「見えないリスク」として顕在化し、実質的に放棄される金額も増加しているのです。
調査の具体的な内容
年間249億円の消失
この調査によれば、50代で持っているデジタル金融資産のうち、相続対象とならない可能性のある金額が年間約249億円と推計されています。ここに、50代特有の事情が影響を与えていると考えられます。具体的には、相続に対する準備を始めるには若い年齢であり、生前整理が遅れていること、資産が増加しデジタル資産の比率も高まっていること、そしてこの世代が特にインターネットバンキングや仮想通貨を利用する割合が上昇していることが挙げられます。
一人当たりの損失額
また、急逝した場合における50代のデジタル資産の相続不能額は、具体的には約48万円(471,623円)に上ります。内訳は以下の通りです:
- - ネット銀行預金: 251,089円
- - ネット証券: 152,775円
- - 仮想通貨: 73,759円
合計で477,623円となります。
相続不能率の高さ
さらに、デジタル金融資産の相続不能率(引き継がれない割合)についても調査しました。それぞれの資産において、53%から57%という非常に高い数字が算出されています。この結果は、デジタル資産の半数以上が家族に気付かれず、手続きに必要な情報が不明なため、実質的に放棄されていることを示しています。
専門家からの意見
Sfil法律事務所の坪内清久代表弁護士は、デジタル金融資産の相続問題を深刻に捉えています。彼は「デジタル資産は相続実務において発見が難しい資産の一つであり、家族がその存在を前提に調査できないという本質的な問題がある」と述べています。また、仮想通貨については秘密鍵を失うことで資産が消失する危険があり、早めの備えが重要であると強く推奨しています。
解決策と今後の取り組み
GOODREIは、そのようなリスクを軽減するために、生前整理の実務ノウハウをまとめた書籍『60歳からのスマホのパスワードあんしん整理ノート』を2025年12月17日に発売予定です。この書籍は、資産を整理する手助けをし、相続に備えたデジタル資産管理の第一歩として活用されることを目指しています。
まとめ
デジタル金融資産の相続不能問題は現代社会で重要な課題です。50代の皆さんは、急逝を想定した生前対策を考えることが必要不可欠です。デジタル資産を家族に引き継ぐためには、事前の準備と情報の整理が不可欠です。早めに対策を講じることで、大切な資産を未来に繋げることができるのです。