生成AI活用の現状と課題、日本企業の取り組みについての調査結果

先日、ボストンコンサルティンググループ（以下、BCG）が実施した調査レポート「AI at Work 2025: Momentum Builds, But Gaps Remain」が発表されました。この調査は世界11カ国で1万600人以上の経営幹部と従業員を対象に行われ、職場におけるAIの活用状況を明らかにしています。そこで今回は、日本における生成AIの利用状況とその背景を詳しく見ていきます。

調査によると、世界全体では72%の回答者が日常的にAIを使用していますが、日本におけるその利用状況は51%と低迷しています。特に一般従業員の利用率は、昨年の52%からほとんど変わっていません。この結果は、過去の調査からの停滞を示しており、日本の企業が生成AI導入において遅れを取っていることを反映しています。インドや中東諸国ではそれぞれ92%や87%と高い数字が出ているのに対し、日本の数字は大きな差があります。

雇用への影響に対する懸念も無視できません。調査の結果、「今後10年で自分の仕事がなくなるかもしれない」と回答した人は41%に達し、特に利用が進んでいる国ほどその傾向が強く見られます。これはAI利用の進展と雇用危機に対する認識がリンクしていることを示しています。

また、AI活用を促進するためにはまずトレーニングと明確な指導が必要だということが浮き彫りになりました。調査によると、十分なトレーニングを受けたと感じる回答者はわずか36%に過ぎません。特に5時間以上の対面でのトレーニングを受けた人は、AIの利用率が高くなる傾向があります。これからの時代、AI活用に向けた教育は必要不可欠となるでしょう。

さらに、適切なAIツールの提供も重要です。調査では、回答者の54%が正式に許可されていなくてもAIツールを使用していると回答しました。特に若い世代は、企業の許可がなくてもAIを積極的に活用する傾向がありますが、これがセキュリティ上のリスクを引き起こす可能性もあるため、企業側の対策が必要です。

経営リーダーの役割も無視できません。調査によると、経営層がAIの活用に関して十分な指針を示していると感じている一般従業員はわずか25%です。しかし、経営層が積極的に関与する組織は、AIの利用率が高まり、前向きな影響を受ける人も多いことが分かっています。

興味深いのは、AIエージェントに対する期待の高まりです。回答者の75%以上が、自律的なタスク管理が可能なAIエージェントが今後のビジネスに必要不可欠だと考えていますが、実際に業務に統合されている企業は日本で7%に止まっています。AIエージェントの仕組みを理解している人ほど、脅威を感じることが少なく、協働の可能性を感じていることも示されています。

今後、AIの利用を進めていくためには、価値の可視化、業務プロセスの再設計、AIエージェントに関する定量的な検証が鍵となります。BCGの中川正洋氏は、「日本企業は積極的なAI活用の姿勢を見せているが、グローバル企業に対してスピードが遅れ始めている」と述べています。日本がどのようにAIをビジネスの中に取り入れていくのか、その動向が注目されます。