熊本地震の活動履歴を探る
2016年に発生した熊本地震は、日本全国に大きな影響を与えました。この地震の原因となった活断層の活動履歴を明らかにするため、千葉大学の大輔准教授を中心とした研究チームが掘削調査を行いました。調査成果は、過去1万5000年間に最大8回の活動があったことを示しています。この重要な発見は、今後の地震発生メカニズムの理解や予測精度向上に寄与すると期待されます。
研究の背景
活断層の将来的な地震発生を予測するには、過去の活動履歴の詳細なデータが不可欠です。これまでの研究では、断層の位置や堆積物の保存状態によって年代精度にばらつきが生じていました。本研究では、2016年の熊本地震を利用して、活断層の位置を特定し、高解像度のデータを得ることを目的に調査が実施されました。
研究成果の概要
この研究の主な成果は以下の通りです。
1.
断層の連動メカニズムの解明: 主断層の近くには、二次的な断層が存在することが、多くの研究で指摘されています。熊本地震においても、布田川断層に並走する出ノ口断層が同時に活動しました。これらの二次的断層の活動履歴を調べることで、主断層の活動周期の理解が進むと考えられます。
2.
3次元変位場の解析: 研究チームは、地震前後の航空測量データを基に、地表の3次元的な動きを詳細に解析しました。地下の滑り方が地表で異なる動きとして現れる様子が明らかになり、出ノ口断層が布田川断層とつながっている可能性も示唆されました。
3.
活動時期の特定: 断層トレンチ調査によって、長期にわたる活動が特定され、最近の活動時期が200〜300年の幅で特定されました。これは従来の研究と比べて非常に高い精度です。
今後の展望
この研究は、主断層だけでなく、周囲の小さな断層を調査することの重要性を示しています。出ノ口断層のように小さな変位を持つ断層は、過去の記録を保存しやすく、これにより地震発生の予測精度が向上する可能性があるのです。今後は他地域でも同様の研究を行うことで、複雑な断層系のハザード評価がさらに改善されることが期待されます。
用語解説
断層トレンチとは、断層の露頭を人工的に作るために掘削された溝のことです。これにより、地層の状態を直接観察することが可能になります。
研究の成果
本研究の成果は、2026年5月に学術誌『Seismica』に発表されました。これからも、断層の理解が深まることで、地震に対する備えが進展することが期待されます。