フランスの作家、ローラン・ビネの新作『遠近法』
2023年6月29日、フランスの著名な作家ローラン・ビネの最新作『遠近法』がついに書店に並びました。この作品は、彼の短い活動の中での最新の一作として、多くの読書好きたちの期待が寄せられていました。ビネは、文才に恵まれた作家であり、彼の前作『HHhH――プラハ、1942年』が本屋大賞の翻訳部門を受賞したことで、日本でもその名が広まりました。
ビネは他にも『言語の七番目の機能』や『文明交錯』など、刺激的かつ魅力的な作品を発表し続けており、その度に読者の心を掴んでいます。『遠近法』は彼の新たな挑戦であり、16世紀のイタリア・フィレンツェを舞台にした歴史ミステリとして注目されています。
舞台はルネサンス期の華やかなフィレンツェ
本作『遠近法』は、ルネサンス期のフィレンツェを描いています。この時期、フィレンツェは美術や文化が栄えた場所であったため、数多くの実在の人物が登場します。この作品の中心にいるのは、マニエリスムの画家ヤコポ・ダ・ポントルモ。彼は、サン・ロレンツォ聖堂にてフレスコ画の作成に取り組んでいましたが、ある日、突如として殺害されてしまいます。彼のアトリエには、フィレンツェ公コジモ・デ・メディチの娘マリアの顔をした猥褻な絵が残され、物語はさらに深層へと進んでいきます。
ポントルモの死の真相に迫るのは、コジモが信じる画家であり美術史家のヴァザーリです。彼は、ローマで大聖堂の建設に携わっているミケランジェロに手紙を送り、助言を求めます。このようにして、事件に関連するさまざまな人物の書簡が絡み合い、物語が進展していく仕組みになっています。
176通の手紙で構成されたユニークなミステリ
『遠近法』の最大の特徴は、176通に及ぶ手紙のみで構成されている点です。手紙を通じて、事件の概要や経緯、真相が徐々に描き出される様は、ビネの巧みな語り口によって緊張感を持って物語が展開されるのです。手紙のやり取りによる捜査は、読者に新たな視点を提供し、より深い考察を促します。
作者のビネは、非常に多くの実在の歴史上の人物を考証して綴っており、彼の作品を通じて当時のフィレンツェの政治的・文化的背景を理解する手助けにもなります。
書誌情報と著訳者プロフィール
『遠近法』の書誌情報としては、判型は四六判上製、ページ数は290ページ、初版は2023年6月26日、ISBNは978-4-488-01695-1です。また、装画にはブロンズィーノの「マリア・デ・メディチの肖像」が使われており、装幀は柳川貴代によるものです。
著者のローラン・ビネは、1972年にフランス・パリで生まれ、現代文学を学んだ後、フランス語の教師や大学の教員として活躍しています。彼は数々の賞を受賞しており、現代フランス文学を代表する作家となっています。
翻訳を手がけた高橋啓は、北海道出身の翻訳家で、多くの作品を手掛けてきました。
結論
ローラン・ビネの『遠近法』は、その独自の形式と深い設定によって、読者を惹きつける魅力的な作品です。興味深い歴史ミステリを求めている方にとって、この作品は見逃せない一冊となるでしょう。未読の方はぜひ手に取ってみてください。