近年、複雑化する経済や社会的課題に対応するために、公務員にはより一層のマネジメント能力が求められています。特に中堅や若手公務員においては、自己のスキルが不明確であるために職務への魅力が低下し、離職が進むという事態が見られます。この問題に対処するため、株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)と株式会社グロービスは、行政官のスキルの明確化を目的とした「行政官のスキル明確化とアップデートに関する研究会」を設立しました。彼らの共同研究の成果として、最近発表された報告書には、公務員のマネジメント能力向上に必要なスキルセットが明記されています。
研究会設立の背景
行政における課題が多様化する中で、公務員に求められる業務の質も向上していく必要があります。しかし、現実には非効率な業務プロセスや個々人のスキルに対する不透明感から、若手人材が公務から離れる傾向が強まっています。このため、人材不足が深刻化し、行政における新たな人材採用戦略が急務とされています。
日本総研とグロービスは、特に国家公務員に必要なマネジメントスキルについて焦点を当てており、10名以上の現役やOBの公務員らが参加しています。彼らは、マネジメント会議を通じて、現状の課題を克服するためのスキルを検討しました。
報告書の概要とその意義
発表された報告書には、公務員に必要なスキルを明確にする意義が盛り込まれています。特に、管理職に求められるマネジメントスキルを中心に、これまであまり議論されてこなかった領域に踏み込んだことは大きな意義があります。この明確化により、公務員としての職務がより魅力的に映ることを期待しています。
スキルの分類と具体的な取り組み
報告書では、公務員に求められるスキルを4つのカテゴリーに分類し、特に管理職向けのスキルに関しては民間企業のものとも共通点が多いことが指摘されています。これにより、民間企業の研修プログラムが公務員のスキル開発に活用できるなら、より効率的な人材育成が期待されます。
さらに、スキル取得を促進する仕組みを整備する必要性も強調されています。例えば、職務に応じた研修を整備し、公務員が忙しい中でも効率よく実践的なスキルを習得できるプログラムを導入することが提案されています。日常的な業務と連動した研修の重要性も指摘されており、OJTだけでなく、eラーニングや外部との交流を活用することが求められています。
今後の展望
日本総研とグロービスは、今後の研究会活動を通じて、中央官庁や地方自治体との連携を深め、スキルの精緻化を進めていく方針です。また、これらのスキルを持つ人材を求める人事施策の展開も進める予定です。
公務員制度や人事制度の見直しが進む中、今回の報告書がさらなる政策提言につながり、公務員の職務がより魅力的に映る基盤を構築することを期待します。公務員離れを食い止めるために必要な一歩と言えるでしょう。報告書の詳細は、日本総研の公式サイトでご覧になれます。https://www.jri.co.jp/