琵琶湖疏水施設が国宝・重要文化財に
令和7年5月16日、国の文化審議会が滋賀県大津市にある琵琶湖疏水施設について、国宝及び重要文化財の指定に向けた答申を出しました。この答申により、今後の官報告示などを経て正式に指定される予定です。これにより、琵琶湖疏水はその歴史的な重要性が改めて認識されることになります。
琵琶湖疏水施設の概要
琵琶湖疏水施設は、大津市の三保ヶ崎から始まり、三井寺下を通り、長等山を越えて、最終的には京都市の山科、岡崎、鴨川左岸、伏見に至ります。この施設は、琵琶湖の水を京都に送り届けるために設計された人口運河であり、さまざまな都市基盤施設とも関連があるのが特徴です。
このプロジェクトは、当時の京都府知事である北垣國道氏の指導のもと、舟運、灌漑、防火、発電、水道など多岐にわたる機能を持つインフラとして計画されました。建設には田邉朔郎が工事主任として関与し、島田道生が測量を担当しました。琵琶湖疏水施設は、明治期の京都を再興させ、近代化を象徴する重要な施設の一つです。
国宝と重要文化財に指定される施設
国宝に指定されるのは琵琶湖疏水施設の第一隧道であり、重要文化財には大津閘門と堰門、大津運河、さらに第一隧道も含まれます。特に第一隧道は、琵琶湖から京都へ水を送るための長い運河を構成するトンネルの中で、最も東側に位置しています。隧道は長さ約2,436メートル、幅約4.9メートルの煉瓦造で、当時としては国内最長です。
隧道の特徴
第一隧道の中には、作業員や資材運搬、換気を目的とした竪坑が二つ設置されています。これにより工事が効率良く進められ、居住空間の安全性も確保されました。第一竪坑は約47メートルの深さを持ち、円形の坑口が特徴です。また、第二竪坑は約23メートルの深さがあり、八角形の坑口を有しています。
隧道の両端には凛とした装飾が施されており、伊藤博文と山縣有朋の扁額が掛けられているのも見どころです。
大津閘門と堰門
大津閘門は、琵琶湖と大津運河との水位差を調整し、船の通行をスムーズにするための重要な装置です。一方、堰門は琵琶湖の水位にかかわらず、疏水に一定量の水を供給する役割を果たします。
大津運河の設計
大津運河は、長さ約197メートルの直線状の開渠であり、花崗岩で構築された二段の石垣によって両岸が支えられています。
文化財としての意義
今回の国宝及び重要文化財指定により、現在の大津市には国宝が37件、重要文化財が310件存在すると言われています。これにより、大津市の歴史的な資源が効果的に保全されていくことが期待されます。
パネル展示の開催
この答申を記念して、大津市歴史博物館では琵琶湖疏水についてのパネル展示を行います。展示は令和7年5月17日から7月13日までの間、無料で観覧可能です。展示内容には、琵琶湖疏水記念館から提供されたパネルやモデルが含まれ、訪れる人々にその魅力を伝えます。Museumに立ち寄り、琵琶湖疏水の歴史を感じ取ってはいかがでしょうか?
文化的価値が高まる琵琶湖疏水施設を通じて、歴史の一端に触れる貴重な機会になることを願っています。