商業宇宙港「北海道スペースポート」の戦略的進展と展望
近年、商業宇宙産業が急速に発展し、その中心的存在となっているのが「北海道スペースポート(HOSPO)」です。ここでは、SPACE COTAN株式会社が運営する2030年に向けた宇宙戦略基金事業の進捗状況についてお伝えします。
1. 宇宙戦略基金への採択
2025年1月、HOSPOは宇宙戦略基金の技術開発テーマに採択され、「将来輸送に向けた地上系基盤技術」を掲げて高頻度打上げを目指す研究開発に取り組んでいます。この計画の中で、射場基盤技術の開発が進行中です。
2. 四半期進捗報告会の開催
2025年7月18日に行われた四半期進捗報告会には、宇宙戦略基金の関係者やJAXAの担当者が参加しました。SPACE COTANの代表取締役社長である小田切義憲氏や研究チームも出席し、これまでの進展について報告がありました。主な成果として、以下の3つが挙げられます:
- - 射場全体システム及び各技術課題の要件定義が完了
- - 検証計画の立案が終わり、各技術の実証に向けた準備が進行中
- - 将来の開発計画や資金調達の方向性が整理
3. 技術実証と気象環境データ収集
今後は、各技術課題のプロトタイプモデルの設計と製作を進めていく予定です。また、気象環境予測技術においては、風速や気温、湿度などのデータ収集を行い、HOSPO周辺の気象環境を詳しく知っていく計画です。先日実施されたラジオゾンデによる観測実験も、その一環として行われました。
4. HOSPOの見学と意見交換
2025年6月6日には、宇宙戦略基金プログラムディレクターの石田真康氏がHOSPOを訪問し、事業関係者との意見交換が行われました。彼は、HOSPOの1,300m滑走路や建設中のLaunch Complex 1(LC1)を視察し、さらに進化する宇宙港の姿を見学しました。
5. 東京事務所の新設
同年6月1日には、東京にSPACE COTANの事務所を開設し、JAXAをはじめとする関連機関との円滑なコミュニケーション環境を整えました。これにより、全国規模の連携が強化され、研究開発の円滑化が期待されます。
6. 大樹町の戦略的意義
北海道スペースポートは、2021年に大樹町で稼働を開始しました。この地は、ロケット打上げのための地理的優位性があり、宇宙関連産業の集積を図る「宇宙版シリコンバレー」の実現を目指しています。地域活性化に寄与しながら、宇宙産業の拡大を牽引しています。大樹町は、2022年度に内閣府特命大臣表彰を受けるなど、地域向けの取り組みが評価されています。
7. 今後の国際協力
さらに、2024年10月には世界5大陸の商業宇宙港との国際協力を進める覚書を締結し、業界全体での相互運用性やコスト削減に向けた取り組みが始まります。このような活動は、宇宙開発のさらなる発展に向けた重要なステップとなることでしょう。
宇宙戦略基金の採択を受けたSPACE COTANが推進する北海道スペースポートは、今後も高頻度打上げの実現に向けた研究・開発に取り組んでいく予定です。私たちはその進展に期待し、注目を続けていきます。