金原ひとみの新作『YABUNONAKA』が毎日出版文化賞を受賞

金原ひとみの新作『YABUNONAKA—ヤブノナカ—』が文化賞を受賞

株式会社文藝春秋から刊行された金原ひとみの小説『YABUNONAKA—ヤブノナカ—』が、第79回毎日出版文化賞（文学・芸術部門）を受賞しました。この賞は1947年に設立され、毎年優れた著作や出版活動を称えるものです。この作品は、MeToo運動やSNSの影響を受けた現代社会における人間模様を鋭く描写した内容となっています。

作品概要

『YABUNONAKA』は、現代の人々が抱える深い悩みや葛藤をリアルに映し出しており、性加害の問題をテーマにしています。物語は、文芸誌「叢雲」の元編集長・木戸悠介を中心に、彼の息子である高校生の越山恵斗、さらに編集部員の五松武夫やその担当作家の恋人、家族などが複雑に絡み合う様子が描かれています。ある女性が木戸からの性的搾取を告発することで、物語は思いもよらない方向へと展開していきます。

あらすじ

ブログやSNSを駆使して自己の経験を発信する女性が、過去に木戸から受けた性的搾取の告発を行ったことから始まります。この告発がきっかけとなり、加害者・被害者・その家族の相互作用が複雑化していく様子は、現代社会の人間関係の脆さや不条理を映し出しています。性や権力、暴力、愛のテーマに踏み込むことで、人間の持つ暗い側面を炙り出し、これまでにない高い解像度で描かれた人物像が読者に迫ります。

著者の言葉

金原ひとみは、刊行時に「変わりゆく時代を共にサバイブしよう」というメッセージを残しました。彼女はこの小説が、特定の誰かを排除するものではなく、私たちが生き延びるための手がかりとして機能することを望んでいます。読んでもすぐに答えが得られるわけではなく、むしろ私たちが生きる社会の複雑さを考えさせ、多様な視点から物事を見直す機会を提供する作品です。こうした思考を通じて、私たちがどう生き延びていくかを描くことが、彼女の大切なテーマなのです。