埼玉県戸田市の調査、ニュースに対する信頼感が向上

埼玉県戸田市で実施された学術調査によると、中学1年生が新聞に毎日触れることで、マスメディアに対する信頼が増すことが確認されました。この調査は、スマートニュース株式会社のメディア研究所が戸田市教育委員会と共同で行ったもので、新聞を読む習慣がない生徒たちが新聞に接触することでどのように意識が変化するかを探求しています。

調査の背景と方法

この調査は、2025年4月から7月の3ヶ月間、戸田市内の中学校1年生約90名を対象に実施されました。参加者は平均して1人1部の新聞を毎日配布され、週2回10分間の新聞を読む時間が設けられていました。調査は4回に分けて行われ、新聞配布前、1ヶ月後、2ヶ月後、配布終了後の計測が行われました。予備的に新聞を配布しない学校の生徒200名にもアンケートを実施し、比較対象として使用しました。

この調査では、新聞の信頼性に関する意見やマスメディアに関する認識の変化を観察するためのデータを収集しました。生徒たちには、気に入った記事に丸をつける活動や家庭に新聞を持ち帰ることも奨励されました。

信頼性の向上

調査結果からは、新聞を配布された生徒たちが、配布されなかった生徒に比べて新聞に対する信頼感が有意に高まったことが明らかになりました。特に、「新聞のニュースはどの程度信頼できるか」という質問に対する回答が改善され、多くの生徒が新聞に触れることで興味を持ち、ニュースの信頼性に対する感じ方が変わったと述べています。

逆に、テレビやSNS経由のニュースについては、信頼度に顕著な変化が見られませんでした。これは、新聞による伝達と他メディアの信頼感の違いを浮き彫りにしています。

生徒の意識の変化

新聞に信頼感が増した生徒の意見には、「毎日見ることで自然と信頼できるようになった」とか、「自分が興味を持つ記事が見つかり、読んでみたら面白かった」といったものがありました。一方で、信頼が下がった生徒からは、「ネットの方が情報が多く、新聞だけでは物足りない」といった意見も寄せられました。

このように、同じ情報でも接触するメディアによって受け取り方が大きく変わることが示されました。

専門家の視点

調査を監修した早稲田大学の小林教授は、この研究が新しい視点を持つ画期的なものであると評価しています。特に、デジタル環境に慣れ親しんだ今の中学生にとって、新聞を読むことは新たな体験であり、意識変化が生まれる可能性があることを指摘しました。また、メディアリテラシーの重要性も強調し、新聞を通して生徒がどのように情報を評価するのかを分析する意義を語っています。

教育現場への示唆

戸田市教育委員会の教育長も、本研究の結果が教育現場におけるメディア教育の重要性を示唆するものであるとの見解を示しました。特に、情報環境が複雑化する中で、新聞という「リアルな情報源」に触れることが生徒たちの視野を広げる一助となると期待されます。フィルターバブルやエコーチェンバーのリスクが指摘される今、情報リテラシーを育成することの重要性が改めて強調されました。

つまり、新聞を通じて得られる多様な情報は、特に今の子供たちにとって欠かせない経験であり、日常的に触れることでメディアに対する批判的な視点をも持つための第一歩となるのです。今回の調査結果は、このような教育の重要性を実証する一助となることでしょう。