日立ソリューションズの新たな取り組み
株式会社日立ソリューションズ(以下、日立ソリューションズ)は、量子コンピュータ時代に向けて注目を集める耐量子計算機暗号(PQC)に関する技術検証を開始しました。この背景には、量子コンピュータ技術の進展により、従来の公開鍵暗号が将来的に解読される可能性が指摘されていることがあります。具体的には、RSAやECDH/ECDSAなどの暗号方式の脆弱性が懸念されており、これに対抗するためにPQCへの移行が急務となっています。
PQCの重要性
NIST(米国国立標準化技術研究所)は、量子コンピュータでも解読が困難なPQCのアルゴリズムを標準化し、世界中での移行を推進しています。日本国内でも、金融庁が金融機関に対して2030年代半ばまでにPQCへの移行を推奨しており、企業の間でもこの動きが強まっています。日立ソリューションズは、2025年から企業のシステムにおける暗号技術の洗い出し、リスク評価、そして移行方針の提案を行う支援サービスを開始する予定です。
技術検証の概要
日立ソリューションズの技術検証は2025年4月から2026年3月まで実施されます。この検証において、既存の暗号からPQCへの安全かつ効率的な移行のためには、適切なプログラムライブラリの選定が不可欠です。このため、複数のライブラリの性能が評価され、実践的な情報が提供されることを目指しています。
特に、「鍵交換」と「電子署名」の性能が重要であり、これらのプロセスがシステムに与える影響を把握することで、企業はより確かな移行戦略を築くことができるとされています。
検証環境にはAmazon Elastic Compute Cloudが利用され、共通の条件下での繰り返し測定が行われます。これにより、環境が異なることによる影響を排除し、信頼性の高い結果が期待されます。
検証結果
検証を通じて得られた結果は以下の通りです:
- - 鍵交換において、PQCは従来の暗号に比べて処理時間が約20分の1になり、高速で動作することが証明されました。
- - 電子署名に関しては、処理時間の差異はほとんどなく、既存の暗号方式と同様の性能を示しています。
- - ライブラリ間の比較では、鍵交換にかかる処理時間には最小0.08ms以内の差しか見られませんでしたが、電子署名では最大1.02msと約11倍まで開きがありました。
- - さらに、TLS通信性能においては、全体で約0.66msの差に抑えられ、データ量もハイブリッド暗号による影響が最小限であることが確認されました。
移行の重要性
PQCへの移行に伴う影響を考慮した結果、システムの性能に大きな悪影響がないことが確認されました。このことは、企業にとって安心してPQCへ移行するための大きな後押しとなります。ただし、電子署名の性能差が大きいため、高頻度処理を行うシステムでは、適切なライブラリ選定が求められることが示唆されました。
企業の取り組み
日立ソリューションズは情報漏洩防止ソリューション「秘文」の開発で蓄積したノウハウを活かし、量子計算という新しい技術への適応に努めています。この取り組みは、将来的なセキュリティリスクに対処するための中期的な視点を持って推進されているのです。
日立は、「耐量子計算機暗号への移行に向けた支援サービス」を通じて、企業の円滑な導入を支援するため、さまざまなリソースを提供しています。移行の決断を支えるための具体的なデータや知見も今後期待されます。
結論
このように、日立ソリューションズの取り組みは、量子コンピュータ時代への対応を強化する重要なステップとなるでしょう。企業は今後、ますます複雑化するセキュリティリスクに対して、適切な対策を講じる必要があります。日立の支援サービスは、その一助となることでしょう。