ブランディングの新たな視点
著名マーケターの西口一希氏は、新著『ブランディングの誤解 P&Gでの失敗でたどり着いた本質』を発表しました。この本は、彼自身の約35年にわたるマーケティングのキャリアを基に、ブランディングの本質を深く考察するものです。特に、笑い話のように語られる「ブランディングによって売上が必ず向上する」という誤解を解き明かします。
ブランディングに対する誤解
多くのマーケティング担当者は、ブランディングを持つことが売上向上のカギであると信じています。しかしながら、本書ではその例がいかに誤解に基づいているかを具体的に論じえます。特にミスを永続させる原因の一つとして、ブランドイメージの向上が必ずしも販売に直結しないことを挙げています。
彼自身の経験を通じて、広告賞を受賞したにもかかわらず、実際の売上にはつながらなかったというエピソードが紹介されています。西口氏がP&Gに在籍していた際、特にヘアケアブランド「ヴィダルサスーン」の広告制作において、エンターテインメント性が高いものの、顧客の機能的便益を伝えきれず、購入意欲が上がらない結果を迎えました。
このような失敗から得た教訓を基に、同書では「顧客が求めるもの」と「ブランドが提供するもの」のギャップを埋める重要性についても詳しく語られています。
誰もが活用できるブランディング理論
この本は、すべての企業の実務家を対象にしています。特に中小企業でも実践可能なブランディング手法を具体的に示しており、特に少ない投資で効果的な戦略を立てる方法を解説しています。西口氏は、ヤッホーブルーイングのような中小企業がどのようにしてブランディングで再生を果たしたのかについても言及し、その実践事例は多くの企業にとってのインスピレーションです。
データによるブランディング効果の測定
また、著者は「ブランディングの効果測定」についての誤解をも解消します。一般に、ブランディングの効果は測定しにくいとされていますが、西口氏は新たな指標を提示しています。その名も「次回購入意向(NPI)」という指標であり、これは顧客が次に商品を購入する意向を測定するものです。この新指標の導入により、ブランドが顧客にどのような影響を与えているのか、より具体的に把握できる可能性が生まれます。
まとめ
本書は、ブランディングに関して多くの誤解を解消し、実務家としての目線での具体的な指針を提供しています。西口氏は、自らの経験に基づいた知識と成功、失敗の事例を通して、ブランディングに対する従来の概念を覆すことを目指しています。この本はマーケティングやブランディングに関わる全ての人にとって、必読の一冊ではないでしょうか。日経BPから出版されており、詳細は日経BP SHOPやAmazonで確認できます。