植物と高齢者のうつ
2025-08-05 10:31:26

玄関の植物が高齢者のうつ症状に与える影響とは?

玄関の植物が高齢者のうつ症状に与える影響とは?



近年、メンタルヘルスが注目されていますが、特に高齢者のうつは公衆衛生における重要な課題とされています。千葉大学の研究チームによる新たな調査結果が、注目を浴びています。東京都のA区に住む2046人の高齢者を対象にしたこの研究によると、玄関周りに植物や花がある住宅に住む高齢者は、そうでない住宅に住む高齢者と比べて、うつの割合がなんと16%も低いことがわかりました。

研究の背景



うつ症状は高齢者の生活に深刻な影響を及ぼし、身体的・認知的機能の低下や早期死亡リスクの増加に繋がることが広く知られています。この研究では、居住環境が高齢者のうつ症状に与える影響を探ることを目的とし、特に玄関周りの特徴に着目しました。これまで玄関周りの環境がメンタルヘルスにどのように影響するかの研究は多くはなかったため、新たな知見を提供することを目指しました。

研究の概要



調査は2022年1月から2023年10月の間に実施され、自記式質問票を用いてデータを収集しました。対象者は65歳以上で、要介護認定を受けていない高齢者2046人です。うつの評価は老年期うつ評価尺度(GDS-15)を用いて行い、得点に基づき「うつあり」と「うつなし」に分類しました。さらに、玄関周りに存在する様々な特徴についても調査が行われました。

この結果、2023年の時点でうつの症状がある高齢者は458人(22.4%)であり、その中でも集合住宅に住む人は23.1%、戸建て住宅に住む人は21.5%となりました。特に、玄関周りに植物がある高齢者は、うつの割合が明らかに低下することが観察されました。具体的には、集合住宅において植物がある高齢者はうつの割合が28%低下し、戸建て住宅でも15%低下しました。

研究の成果



この研究の意義は、明確に室外の環境、特に玄関周りの植物が高齢者のメンタルヘルスに影響を与えうるということです。調査結果からは、以下の三つの要因が考えられます。

1. 社会的交流の増加: 植物の世話をすることで近所の人と挨拶や会話が増え、社会的なつながりが強化されることがメンタルヘルスの改善に繋がった可能性があります。

2. 身体活動の活性化: 植物の管理を通じて日常的に身体を動かすことが促進され、うつの予防や軽減に寄与したと考えられます。

3. ストレスの軽減: 自然と触れ合うことが、心のストレスを和らげ、その結果としてメンタルヘルスが改善された可能性が示されています。

今後の展望



本研究は横断的調査であるため、今後は縦断的なアプローチを通じて、玄関周りの特徴とうつ症状との因果関係を探る必要があります。また、植物の種類や数、配置方法についても詳しい研究が求められます。特に集合住宅では、管理方針や設置可能なスペースの確保が重要な課題となるでしょう。高齢者が健康で幸せに過ごせる環境づくりとして、玄関周りの植栽が強く支持されることを期待しています。

研究プロジェクトについて



本研究は、JSPS科研費や地域中核大学イノベーション創出環境強化事業などの助成を受けて実施されています。この成果が高齢者の健康を支えるための新たな方向性を提供し、より良い社会を築く手助けになることを願っています。

論文情報


  • - タイトル: Association between home entrance characteristics and depression: A cross-sectional study of community-dwelling older adults in Japan
  • - 著者: Hiroaki Yoshida, Masamichi Hanazato, Yoko Matsuoka, Yu-Ru Chen, Aiko Eguchi, Yusuke Mizuno, Hiroki Suzuki
  • - 雑誌: Preventive Medicine Reports
  • - DOI: 10.1016/j.pmedr.2025.103148


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