鹿島式ストレート梁工法の実践
日本の建築業界では、近年新たな施工技術が求められており、特に高層建築においては生産性と安全性が非常に重要視されています。そんな中、鹿島建設が新たに開発した『鹿島式ストレート梁工法』が注目を集めています。この工法は、高層建築物における鉄骨梁の製作手間や現場での溶接量を大幅に削減することを目指しています。
新工法の特徴
『鹿島式ストレート梁工法』は、鉄骨梁端部の接合部を合理化することにより、品質と生産性の向上を実現しています。この工法では、CFT(Concrete Filled Tube)柱と鉄骨梁の接合部に孔あき鋼板ジベルを使用して接合部を補強します。これによって、従来必要だった水平ハンチの取り付けを省け、柱周りのスペースを広げつつ高い構造性能を保持できます。
さらに、自社開発の現場溶接ロボットを用いることで、梁下フランジの上向き溶接が可能となり、ジベルなしでも構造性能の向上が見込まれます。実際にこの技術は、日本建築センターの一般評定も取得しており、信頼性の高い工法として業界内で認識されています。
背景と開発の動機
この新工法の開発背景には、1995年の阪神・淡路大震災が影響しています。あの震災では、多くの鉄骨大梁の端部が破断するという事態が発生しました。これを受けて、鹿島建設では鉄骨大梁の端部に水平ハンチを設ける工法を考案し、これまた多くの鉄骨造高層建物に採用されてきた経緯があります。しかし、この工法にはいくつかの課題が残されていました。具体的には、水平ハンチの設置による周辺設備の配置が難しくなること、鉄骨製作時の加工手間が増加し、現場での溶接作業量も増えてしまうという点です。
効率化と有効活用
新たな『鹿島式ストレート梁工法』では、ジベルにより貴重な空間を有効に活用できます。この技術革新により、設計の自由度が向上し、現場作業の効率化が実現されました。また、鉄骨の加工精度も向上し、溶接部の品質が確保されやすくなっています。
上向き溶接技術の導入
加えて、現場溶接ロボットによる上向き溶接技術の導入も注目ポイントです。この技術により、スカラップと呼ばれる構造上の弱点を省略できるため、構造性能がさらに向上します。ジベルを追加すれば、より強固な構造が期待できるため、現場の状況に応じた柔軟な対応が可能になるでしょう。
構造実験による評価
実際に、鹿島は『鹿島式ストレート梁工法』の効果を確認するために構造実験を行いました。実験では、ジベル補強の効果による耐力の上昇が確認され、一般的な工場溶接で製作されるノンスカラップ鉄骨梁端接合部と同等の変形性能を証明しました。
今後の展望
今後、特にCFT造建物の需要が増えていく中で、高い耐震安全性はもちろん、設計と施工の合理化へのニーズはますます高まるでしょう。鹿島建設では、今後も『鹿島式ストレート梁工法』を積極的に取り入れ、さらなる顧客満足と社会的ニーズに応える提案を進めていく考えです。
工事概要
- - 工事名称:仮称 札幌4丁目プロジェクト新築計画
- - 事業主:鹿島建設
- - 所在地:札幌市中央区南1条西4丁目
- - 建物用途:事務所・物販店舗・飲食店舗・駐車場
- - 構造規模:S造(CFT造柱)、地下2階、地上13階
- - 設計施工:鹿島建設
- - 工期:2023年3月~2025年3月(予定)
このように、新たな施工技術の導入により、高層建築の設計・施工過程が大きく変わろうとしています。今後の進展が楽しみです。