都会の過疎対策に挑む専門店の開業
現代社会の歪みとも言える都市部の過疎化。そんな状況を打破するため、女性菓子職人が大阪府豊中市に小さなパイ菓子専門店を開業することになりました。このプロジェクトは、株式会社キッチンエヌ(兵庫県神戸市)からの支援を受けたもので、個人事業所「ソイル」の代表である金森幸子さんが中心となって進めています。彼女は、ここ数年来、フードプロデューサーとして地域の食を通じた活性化に取り組んできた実績があります。
地域課題とスイーツの関係
豊中市は、特にその中でも豊南町西エリアが高齢化や人口減少に悩んでいます。2025年の予想では、同エリアの人口は4000人を切り、数年前から5%減少する見込みです。高齢者の割合は33.4%に達し、全国平均の29.3%と比較しても大きく上回っています。このような状況の中で、金森さんは「食の力」が地域には不可欠であると確信し、開業の一因としました。
彼女は、高知県の限界集落での経験を通じて、都会の一角でさえも地域コミュニティの活性化には工夫が必要であることを実感してきました。特に、関西万博が華やかに執り行われていたころに、「ブラックホール」のように取り残された場所に何かを創出する必要性を強く感じたのです。
ソイルの取り組みと過疎対策
金森さんは過疎地域での食の重要性を理解し、行政の依頼に応じてコミュニティを支援する活動を続けてきました。食の特性を生かした施設作りに力を入れてきた成果があるのです。高知県の奈半利町にある「奈半利のおかって」や、茶農園が運営するカフェ「あすなろ」等は、成功事例として知られています。これらの施設での経験を通じて、金森さんは「食が人をつなぐ」という実感を得て、今回のパイ菓子専門店開業に至りました。
商品の特徴と地域への貢献
金森さんの新しい店舗、「SACHIKO-KANAMORIパイ菓子研究所」では、北海道産バターを使用した折込パイやクッキーが販売される予定です。パルミエや練り込みパイなど、様々な種類を取り揃え、手頃な価格設定で地域の人々に愛される商品を提供します。また、季節に応じた新しいフレーバーのパイも開発して提供していく予定です。
これからの営業スタイルについては、週に一度のオープンから始め、地域の反応を見ながら徐々に営業日を増やしていく考えです。金森さんは、「地域の菓子好きな人を増やしたい」との思いを抱き、多様な形や種類の商品を展開することで、地域の活性化を図る意思を明かしています。
未来に向けた展望
ソイルとしての1つの取り組みではありますが、金森さんは、このスイーツを通じて地域課題解決の糸口を探ります。食を媒介にしてコミュニティをつくり、世代を超えたつながりも生まれることを夢見ています。また、彼女は自身の技術と経験を駆使して、地域の人々にとって身近で安心できる場所を築くことを目指しています。
将来的には、地域に根付いたパイ菓子屋としての地位を確立し、さまざまな食文化を広めていくことが彼女の目標です。小規模であっても、位置情報の発信とともに、地域の未来を共に育てる意義深い挑戦が始まります。