市川團十郎と歌川派の絵師たち：江戸歌舞伎の魅力を再発見する展覧会

江戸歌舞伎の巨星、市川團十郎に迫る

江戸時代、歌舞伎の中核的存在であった市川團十郎。彼の名は今でも多くの人に知られていますが、その真の魅力をどう理解すれば良いのでしょうか？

今回開催される「市川團十郎と歌川派の絵師たち」展は、江戸歌舞伎の魅力を再発見する貴重な機会です。展覧会は、團十郎の襲名披露興行に合わせて開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で一度は見合わせとなりました。しかし、その後の期待に応える形で実現にこぎつけたのです。

演者としての市川團十郎

市川團十郎は、単なる歌舞伎役者ではなく、江戸の守護神のように崇められてきました。彼の演じる「荒事」は、特に見る者を魅了し、多くのファンからの支持を受けました。初代から十三代目まで、團十郎を名乗る役者たちが存在し、それぞれが個性を発揮してきました。

特に展示される七代目から九代目は、江戸から明治へと時代が移り変わる中でも、歌舞伎の伝統を守り続け、さらには発展させてきました。彼らの作品を通じて、苦しい時代においても何とか歌舞伎の盛り上がりを維持しようとする強い意志を見ることができます。

浮世絵師による表現

展覧会では、初代歌川国貞、歌川国芳、豊原国周など、著名な浮世絵師たちによる作品も見どころです。浮世絵は、歌舞伎を支える視覚的柱とも言える存在であり、作品からは團十郎の演技の迫力を感じ取ることができます。

国貞の「助六」、国周の「勧進帳」といった作品は、特に注目に値します。これらの絵は、ただの演技を超えた文化的な宝として、江戸時代の生活や価値観を色濃く反映しているのです。

歴史の証人としての展覧会

展示される53点の作品は、どれも保存状態が優れ、鮮やかな色彩で目を引きます。特に浅井コレクションとして知られるこれらの浮世絵は、長年にわたり光や空気に触れることなくその美しさを保ってきました。

江戸と明治の転換期において、のちに現代の歌舞伎の基礎を作る役者たちの物語とその映像が、これらの作品に込められています。展示を通じて、團十郎親子三代の栄光と悲劇を体感しながら、歌舞伎の魅力に触れることができます。