乳化状調味料による食べやすさ向上の研究
日本は高齢化が進行している国であり、高齢者が直面する食事の困難さは、噛む力や飲み込む力の低下から生じるものです。この課題に対し、食品メーカーのキユーピー株式会社は、和洋女子大学との共同研究を通じて、特に高齢者に寄り添った新たな食の提案を行っています。
この研究では、乳化状のドレッシングやマヨネーズを利用することで、野菜などの食材に混ぜ込み、食べやすさを向上させることの実証を目指しました。2024年9月、特定非営利活動法人日本咀嚼学会において、この研究の成果が発表され、乳化状調味料の効果が高く評価されました。
研究の背景
高齢者の食事における「食べにくさ」は、誤嚥性肺炎など重大な健康問題に繋がることがあります。特に、日本国内では急速に進行する高齢化に伴い、食べ物をうまく口に運び、飲み込む能力が低下することが懸念されています。この問題を解決するため、キユーピーは家庭で一般的に使われる調味料を活用して、食べやすい工夫を行う必要があると考えました。
研究の目的と方法
この研究は、中高年を対象に乳化状調味料が持つ食べやすさの向上に関する官能評価を実施しました。71名の参加者(59〜79歳)のうち、噛みづらさがある人10名と、そうでない61名に分け、特定の食材(じゃがいも、ゆで卵、ツナ、キャベツ)に調味料の有無による評価が行われました。
評価基準は以下の4つです:つぶしやすさ、噛み切りやすさ、まとまりやすさ、飲み込みやすさ。これらの要素が評価され、乳化状調味料を加えた場合の食べやすさに関する具体的なデータが集められました。
研究結果
結果は非常に明確でした。全ての食材において、乳化状調味料を追加した際、食べやすさが有意に向上することが確認されました。特に、噛む力が低下している層においては、その効果が顕著に現れました。例えば、乳化状調味料なしで食べにくいと感じた参加者も、追加によって大幅に食べやすくなったというデータが蓄積されました。
今後の展望
本研究を通じて、乳化状調味料が高齢者の食事における栄養摂取の向上に寄与する可能性が示されました。今後は、飲み込み能力の測定や他の客観的評価方法を用い、さらなる研究を進める予定です。具体的な応用においては、個別のメニュー提案や高齢者向けの栄養プログラムを構築し、家庭や福祉施設など様々な場所での活用を目指しています。
研究を進めるキユーピーは、今後も高齢者の豊かな食生活をサポートするために、さらに多様な取り組みを行っていくことを約束しています。このような活動が、日本の高齢者の食に関する課題解決に寄与することを期待しています。