2024年11月1日、富山県の毛勝三山周辺が国指定の北アルプス鳥獣保護区に新たに追加されました。この地域は、絶滅危惧種であるライチョウの生息地にあたります。環境省の決定は、9月12日に行われた中央環境審議会での討議を経て下されたもので、最近のライチョウの目撃情報が大きな要因となりました。
登山者がスマートフォンを使って撮影したライチョウの写真を集め、ビッグデータとして活用する「みんなで守る山岳生態系プロジェクト」は、アウトドア企業のヤマップとの協働により進められています。プロジェクトでは、登山者からの目撃情報を駆使して生態系の変化をリアルタイムで分析し、守るべき生息域を広げています。
ライチョウは、日本の高山帯特有の生物で、2012年には絶滅危惧Ⅱ類から絶滅危惧IB類に格上げされるなど、生存が危ぶまれています。しかし、2018年には中央アルプスでメスのライチョウが確認されてから、保護活動が行われてきました。専門家による調査が難しい毛勝三山周辺での追加の目撃情報は、環境省がライチョウの繁殖を確認するために重要な資料となったのです。
毛勝三山周辺の厳しい環境にもかかわらず、ライチョウが生息できる可能性があることが今回の保護区拡張の一因とされています。環境省信越自然環境事務所の専門官、小林篤氏は、登山者からの報告が生息確認において非常に意義があると述べています。これまでも春にペアとして目撃されたりするなど、継続的に繁殖の可能性が高いとされていますが、今後の生息状況についても引き続き注視していく必要があります。
「ライチョウモニター」というプロジェクトでは、ライチョウの目撃情報を画像認識技術を使って収集し、日本地図上に可視化します。これにより、従来の調査方法では見落とされがちな高山帯でも効果的にモニタリングできる仕組みが構築されました。登山者が気軽に情報を提供できる環境が整っており、これによりライチョウの保護活動が効率化されていきます。
未来のライチョウの生息環境の保全は、私たち一人ひとりの協力にかかっています。全国の登山者が互いに助け合い、貴重な情報を共有することで、ライチョウの生存が支えられるでしょう。自然と共生するライチョウの保護を目指し、さらなる取り組みが進むことが期待されています。