音楽とともに生きた家族の物語
新刊『Segue音楽とともに生きた家族の物語』が、昭和の仙台を舞台にした家族の歴史を明らかにします。音楽教師となる長女・元子が、リウマチという病に立ち向かいながらも、音楽を通じて人生を切り拓いていく姿は読む人に共感を呼び起こします。この物語は、特に音楽と家族の絆が描かれており、辛い時期や楽しい瞬間が全部音楽に纏わるものであったことが印象的です。
物語は、昭和初期の仙台でスタートします。当時18歳のたみ枝が石森家に嫁ぎ、姑や働かない夫との苦労に直面します。その後、仙台大空襲に見舞われるも、音楽好きの夫とともに7人の子供たちを育て上げる姿には、家族を守るための強い意志が感じられます。子どもたちも、それぞれ個性豊かに成長し、戦争を生き抜いてきた力強さが印象的です。
特に際立つのが、元子の成長物語です。彼女はリウマチに苦しみながらも、自分自身で音楽を学び、最終的にはヴァイオリンとピアノの教師になります。彼女の人生はまるで映画のワンシーンのようで、逆境に立ち向かう姿勢からは、勇気をもらえること請け合いです。彼女がリウマチを抱えながらも音楽教師になったことは、多くの人にインスピレーションを与えるでしょう。
本書には家族の手記や新聞、回想をもとにした資料が収集されているため、読者は昭和の生活がいかにして家族に影響を与えたかを理解できます。たみ枝が引き起こした様々なエピソードや、音楽と共にあった日常、地域社会とのつながりが詳細に描かれているため、当時の人々の生活や楽しみ、苦しみが鮮やかに蘇ります。例えば、移動動物園で初めて象を見た体験や、進駐軍への慰問、レコードコンサートへの参加など、懐かしい昭和の文化が詰まっています。
兄弟姉妹のドタバタとした日常も描かれており、楽しいエピソードが多いことも本書の魅力です。そのため、昭和を生きた人たちには懐かしく、また若い世代には新しい視点で楽しんでもらえる内容となっています。
「Segue」という言葉は音楽用語で、楽章と楽章の間を切れ目なく続けることを意味します。この本の中で描かれる石森家の物語も、音楽を中心に描かれており、家族がともに歩んできた人生の軌跡が読み取れます。
この騒がしい世の中でも、時には過去の人々の思いに触れることが重要です。本書はそれを提供してくれる一冊です。戦後80年を前に、この家族がどう強く、柔軟に生き抜いてきたのか、一緒に追いかけてみましょう。