2023年11月から12月にかけて実施された「第4回幼児教育・保育についての基本調査」は、株式会社ベネッセコーポレーションが展開する研究機関であるベネッセ教育総合研究所によって行われました。この調査は、日本全国の幼稚園、保育所、認定こども園の園長と保育者を対象に、職場環境、仕事満足度、各種負担感についての実態を明らかにすることを目的としていました。
調査の結果、保育者の約70%が職場や仕事に満足しているという一方で、実に80%が事務作業の多さに負担を感じていることがわかりました。また、事務作業量や労働時間などの負担感が低い保育者ほど、仕事満足度が高い傾向が見られました。このことは、職場環境の質と保育者の仕事満足感が密接に関連していることを示唆しています。
特に興味深いのは、保育者同士の連携や園長のマネジメント力が、満足度の向上に寄与しているという点です。調査によると、一体感を感じる園では保育者の仕事満足度が高いことが確認されました。対照的に、一体感を感じない園では、十分な仕事満足感を得られないという結果が出ています。
調査結果から浮かび上がった保育者の仕事負担感についても注目が集まっています。79.4%の保育者が事務作業量の多さに負担を感じ、66.9%が配慮が必要な子どもへの対応が自己負担と感じています。また、63.8%は子どもを預かる責任の重さを感じ、56.4%の保育者が研修時間の不足を問題視しています。このように多岐にわたる負担は、保育者のバーンアウトを引き起こす原因となっています。
また、調査結果によると94.9%の保育者が「保育者同士で子どもの姿をよく語り合う」と回答しており、86.5%は「安心できる雰囲気がある」と述べています。このように、保育者間のコミュニケーションがよく取れていることや、安心できる職場環境が整っていることは、保育の質の向上にも寄与する要因となり得ます。
とはいえ、調査によって明らかになった保育者の職場環境の課題は深刻です。現場では、少子化の進行や社会の多様化に伴い、園に求められる役割が広がりつつあります。「量の確保」から「質の向上」への移行が見られる中で、保育者へのサポート体制を整えることが急務であるといえるでしょう。
ベネッセ教育総合研究所は、調査結果に基づき、今後保育者が働きやすい環境を整え、より良い保育実践に向けた提案を行っていく予定です。保育の質を高めるためには、現場で実施される取り組みがますます重要となり、今後の教育政策や職場環境の改革に期待が寄せられています。特に、園全体での連携や園長のリーダーシップが、保育者の仕事満足度に大きく影響することから、こうした視点が今後も求められるでしょう。今後の展望として、保育者がより安心して働ける環境の実現を目指し、さらなる調査が期待されています。