ウェールズ大学MBAプログラムと地域医療
2025年11月21日、ヒューマンアカデミー株式会社が主催したオンライン講演会では、ウェールズ大学トリニティセントデイビッドMBAプログラムの卒業生、齊藤裕之准教授が登壇しました。彼は山口大学医学部附属病院で総合診療部の准教授として、多面的な視点から日本の医療が抱えている課題と、その解決に向けたアプローチについて語りました。
医療現場でのMBA教育の影響
齊藤氏は全26年間の医師キャリアを通じて、医療政策に潜む問題の深刻さに気付きました。実際、彼が紹介した2017年の調査では、医療費の増加や医師・看護師の数が死亡率に直接的な効果を持たないことが分かりました。このデータは、地域医療の資源配分だけでは健康レベルを向上させられないことを示しています。
長野県が良好な死亡率を維持している一方で、医療資源が不足している事例を挙げ、齊藤氏は医療の質向上には、単に数を増やすだけではなく、質の高いケアを提供することが重要だと主張しました。ここで彼は、MBAで学んだ経営の視点が、いかに医療現場での改革に役立つのかを語ります。
日本の総合診療医制度の遅れ
日本の総合診療医制度は、海外と比べて約50年遅れており、わずか1,000人の専門医が実在するに過ぎません。この影響は、予防医療や過剰な入院の防止、さらには医療費の抑制に反映されています。今後、2040年には高齢者の急増と現役世代の減少が予測されるため、医療システムの根本的な再構築が求められます。
2040年問題とその影響
2040年、5人に1人が医療従事者にならない限り、日本の医療水準を維持できないと警告されています。このような状況の中、多疾患を抱える高齢者に対応するためには、専門医だけでなく総合診療医の増加が不可欠です。重要なことは、医療アクセスは健康に関連する要素の20%に過ぎず、地域環境や社会的要因が40%を占めるという事実です。この観点から、地域医療を支えるためには、コミュニティのつながりを強化し、社会的孤独を減少させることが重要です。
MBAを通じた地域医療の実践
齊藤氏は、山口県の地域医療での活動を通じて、若手医師の育成に注力しています。彼は10年かけて総合診療研修施設を27カ所に拡大し、予防医療を提供できる地域の医師の育成が、地域の健康改善につながると強く信じているのです。MBAで学んだマネジメントの原則は、彼の地域医療におけるアプローチの核となっています。
まとめ
齊藤裕之氏の講演を通して、日本の医療が目前に直面する大きな課題と、その解決に向けた視点を得ることができました。地域医療の未来を切り開くためには、新たな視点を持った医療のプロフェッショナルが求められています。
ヒューマンアカデミーのウェールズ大学MBAプログラムは、医療従事者を含む多様な分野で、経営のスキルを学ぶ機会を提供し、彼らが実践の場で活躍できるようサポートしています。今後ますます進化する医療環境において、こうした取り組みが一層重要になるでしょう。