愛媛・新居浜市発、共創型デザインの成功事例
愛媛県新居浜市に位置するデザイン事務所、Kuuche Design(クーチェデザイン)が制作した3つのギフトパッケージが、イタリアで開催される「A’ Design Award & Competition 2025」での受賞を果たした。受賞したのは、Bronze賞が2作品、Iron賞が1作品という快挙である。
受賞作の顔ぶれとそれぞれの特徴
1. はがた農園のお漬物パッケージ(Iron賞)
この作品は、地元のはがた農園が製造する漬物のブランディングを目的に開発された。農業の持つ魅力を伝えるために、地元クリエイターとの共創によって“手渡ししたくなる”パッケージを形にした。蓋に施された大根の葉をモチーフにしたデザインは、見た目の良さだけでなく、農家の想いを記すスペースも確保されている。
この漬物の売上は、地元の小学校給食用の野菜の育成費に役立てられ、地域の教育と農業を活性化するサイクルを生む役割も担っている。このデザインは単に美しいだけでなく、地域課題への意識を促し、共感を生む媒介として評価されている。
2. はがた農園 野菜のギフトボックス(Bronze賞)
次に、Bronze賞を受賞したギフトボックスは、地元農家が育てた野菜を贈り物として届けるために設計されたものである。特徴的なのは、人参を象徴的に取り入れたデザインで、五感に訴えるような体験を提供することを意図している。
箱のデザインは、人参の断面を抽象化した図案をモチーフにし、開封時や食べ終えた後にも美しい余韻を残す工夫が施されている。ラベル跡がつかず、再利用できる設計も評価のポイントで、「地域の恵みを記憶に残る贈り物に変えるデザイン」として高く評価された。
3. きのこ飯(KINOKOMESHI)パッケージ(Bronze賞)
最後に、地元産のきのこを使用した炊き込みご飯の素のパッケージである。この作品は、アウトドアで楽しむための地元の味として再提案されている。鮮やかなカラーリングが特徴的で、テントや自然の中でも目立つようにデザインされている。
このパッケージは、配送中の破損を避けつつ、手にとったときの楽しさを強調した設計。日常と非日常のあいだで新しい食体験を提供することを目指しており、地域食材の可能性を広げることに寄与している。
地域活性化に向けた今後の展望
Kuuche Designは、今回の受賞を受けて、地域の課題解決に深く入り込み、現場の人々と共に形を作る「共創型デザイン」を今後も推進すると表明している。彼らの目指すデザインは、単なる視覚的な美しさにとどまらず、地方創生のための力を発揮することが求められる。
彼らは、農業や福祉、教育、ものづくりなど、多様な分野のパートナーとの協働を通じて、地域の声と素材に寄り添ったものづくりを続けていく。想いを形にし、地域の力を丁寧に確実に届ける、その姿勢がKuuche Designのデザインの本質である。
結論
愛媛県新居浜市から発信された共創型デザインは、国際的な舞台での評価を得るに至った。地域資源を効果的に活用し、人々の生活に寄り添う製品を通じて、地方創生の可能性を示唆する成果と言える。今後もKuuche Designの活動に期待したい。