新作小説集『※個人の感想です』の魅力
2025年1月31日(金)、株式会社KADOKAWAから伊藤朱里による小説集『※個人の感想です』が発売されます。この作品は、SNS時代における「推し」をテーマにした4つの短編から構成されており、現代人の心理や人間関係を鋭く描写しています。
伊藤朱里は、2015年にデビューを果たし、数々の受賞歴を持つ注目の作家です。それまでの作品も多くの読者から支持を受けており、今回は特に「推し」とSNSを巡る物語に焦点を当てて書き下ろされました。発売を記念して、特定期間中に第1話の全文を無料公開するサービスも実施されています。
SNSが生み出す新たな人間関係の葛藤
本作の第1話は、フィットネス系YouTubeチャンネルを運営するインフルエンサー・かなめが主人公です。彼女は、読者モデル時代の同期から厄介なコメントについての警告を受け、SNS上での人間関係に苦悩します。この話は、SNSの発展に伴う人々の心の距離感や、現実社会とデジタル世界の相互作用に光を当てています。読者モデル時代の仲間との関係性を通じて、誠実さや伝え方の難しさを考えさせます。
若手編集者の面白おかしい奮闘
続く短編では、編集者の野村が登場します。彼は異動後に扱うことになったYouTuber・はしゆりとの不思議な関係を描かれています。この物語では、偶然の出会いによって生じる質問や戸惑いが、彼の成長へとつながります。野村の目を通じて、多様な価値観や世代間のギャップについて考えることができます。
平凡がもたらす特別な感覚
また、NPOで働く関というキャラクターが登場し、彼女が持つ「平凡な主婦」としての喜びや葛藤が描かれています。このキャラクターを通じて、職場環境や社会からの期待、多様性の重要性が浮き彫りにされます。特に、若いインターン生の小田嶋さんとの価値観の相違が、物語にさらなる深みを加えています。
過去と現在の交差
アイドルオーディションに挑戦した由良すみれのエピソードでは、過去の栄光と現在の普通の生活との狭間で揺れる心情が描かれ、この短編集の中でも目を引く章になっています。彼女はファンへの感謝をTwitterで表現し続けるものの、不安が増していく様子が、SNSの弊害や期待に押し潰されることの恐ろしさに気付かせます。
伊藤朱里が語るメッセージ
著者の伊藤は、今回の作品を通じて「人との距離感」や「理解できないものとの関係」を探ることを目的としています。自身の体験を交えながら、読者に思考を促すスタイルは、非常に共感を呼び起こします。著者は、読者がこの本を通じて自らの考えを深められればと願っています。
まとめ
『※個人の感想です』は、現代のSNSがもたらす問題や人間関係を新たな視点で捉えた作品です。伊藤朱里の独特な筆致によって描かれる感情の交錯は、多くの読者にインスピレーションを与えることでしょう。興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。