「学ぶ権利」を保障するために:経済的に困難な家庭の子どもたちへの支援策を検討すべき
国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは、経済的に困難な家庭の子どもたちに対する新入学サポートの現状を調査しました。その結果、パソコン・タブレット代の高額化や、高校入学前の準備資金不足など、子どもたちの「学ぶ権利」を阻む要因が浮き彫りになりました。
調査は、2024年春に実施された「子ども給付金 ~新入学サポート2024~」の利用者アンケートに基づいています。対象は、経済的困窮に加えて特定の生活上の困難がある子育て世帯です。
アンケートでは、高校入学時のパソコン・タブレット購入費用が大きな負担となっていることや、義務教育課程ではタブレット機器本体以外の費用負担が生じていることが明らかになりました。また、高校入学のための準備金についても、保護者の多くが7万円以上が必要と考えていることがわかりました。さらに、高1保護者の約半数が、経済的な理由で高校就学を継続できない可能性があると回答しました。
これらの結果を受けて、セーブ・ザ・チルドレンは、国や関係省庁、自治体に対し、以下の5つの提言を発表しました。
1.
学校指定品以外の選択を可能にし、価格の見直しを
制服代、運動着代、パソコン・タブレット代など特に高額となる費目について、指定品以外の選択を可能とすることや、現在指定している学用品の価格が適正かどうか見直すことが求められます。
2.
新入学にかかる費用の支援制度の拡充
中学校については就学援助制度の入学準備金の増額、高校については高校生等奨学給付金の増額など、実態に応じた支給金額の見直しが必要です。特に高校については通学費の負担が発生するため、経済的に困難な状況にある世帯を対象とした通学費の支援策を早急に検討する必要があります。
3.
高校入学前の準備金の創設
高校入学にあたっては中学校入学以上に費用がかかり、経済的に困難な状況にある世帯では新入学に必要な費用の捻出が難しいケースが多いです。高校入学前に、こうした世帯への給付を迅速に行うことが不可欠です。具体的な給付額や方法については、文部科学省が実施している『子供の学習費調査』やセーブ・ザ・チルドレンなど民間団体の行う調査を参考にしながら、当事者の実態に即して検討する必要があります。
4.
パソコン・タブレット代の負担に関する実態把握と国による助成の拡大
国はGIGAスクール構想の高等学校段階におけるICT環境整備のため、1人1台の端末導入を推進しています。一方で、端末の購入について、公費負担または保護者負担とするかは各都道府県や自治体、学校で対応が異なるため、全額私費負担の場合、経済的に困難な世帯の家計への負担は非常に大きくなります。国は、自治体や学校ごとによる対応状況の実態を把握し、高校段階においても子どもたちが経済的負担なくパソコン・タブレットを用いて学ぶことができるよう、助成を拡大する必要があります。
5.
部活動・クラブ活動の費用の財政的措置
入学時に自分の希望するスポーツや文化活動を選択・経験することは、子どもの自己決定や成長・発達において意味を持ちますが、費用の捻出が難しくあきらめざるを得ない子どもたちが存在することが明らかになりました。本調査では、部活動・クラブ活動への支援を求めている中高生が6割を超えており、入学時から希望する活動を選択できるような経済的負担の軽減が求められます。国や自治体は、備品の共有化のほか、就学援助制度や高校生等奨学給付金における部活動・クラブ活動費の単価引き上げなど財政的措置を進めるべきです。
セーブ・ザ・チルドレンは、これらの提言が実現することで、経済的に困難な家庭の子どもたちが、安心して学び続けられる環境が整うことを期待しています。