文化財鑑賞の新時代、VR作品『洛中洛外図屛風 舟木本』が再上演
東京国立博物館(以下、東博)とTOPPAN株式会社が共同で運営する「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」が、2026年3月29日をもって運営を終了します。それに先立ち、2026年1月1日から3月29日まで、VR作品『洛中洛外図屛風 舟木本』が再上演されます。この作品は、東博が所蔵する国宝「洛中洛外図屛風(舟木本)」を基にしたもので、約400年前の京都の風景とその背後にある文化を体験できる貴重な機会です。
プロジェクトの背景とミュージアムシアターの役割
2007年から始まったこの共同プロジェクトは、文化財を新しい形で観賞する手段を提供することを目的としています。これまでに延べ約50万人の観客が訪れ、特にVRを取り入れた体験が高く評価されています。来場者からは「展示室での鑑賞がより楽しめた」という声も寄せられており、文化財の多様な視点からの楽しみ方を提供することで、参観者の関心を引き続けてきました。
VR作品『洛中洛外図屛風 舟木本』の魅力
本作は、岩佐又兵衛による国宝「洛中洛外図屛風(舟木本)」をもとに、400年前の京都の人々の生活と文化を新たな視点で再現した作品です。展示された屛風に描かれた1,500人以上の人物と、その生活様式をVRで細部まで体験可能なのが特徴です。大坂夏の陣の直前、京都の日常風景や行事、特に祇園祭などが精密に描かれており、現代にも通じる京都の文化を感じ取ることができます。
また、一般的な鑑賞方法では見えない小さなディテールを、VR技術により300インチの巨大スクリーンで鮮やかに表示します。このように高精度な映像によって、観客は当時の京都にひたひたと浸ることができるのです。
サプライズイベントと特別展
再演期間中、特にお正月の期間には特別なプログラムも企画されています。1月1日には14時回から、1月2日は11時回からの特別上映が行われるほか、来場者にはオリジナルステッカーのプレゼントも用意されています。これらのイベントは、訪れる人々にとって忘れられない体験となるでしょう。
また、シアターの前では同じく国宝の高品位複製品が展示され、過去19年間のミュージアムシアターの歴史を振り返る展示も行われる予定です。来場者は、さまざまな文化財の鑑賞体験を通じて、文化とは何かを再考する機会を得られることでしょう。
未来への展望
ミュージアムシアターの運営終了を受け、東京国立博物館、文化財活用センター、TOPPANは今後、新たな活動を通じて国内外で日本美術の魅力を広めていく計画を進めています。今回のVR作品をはじめとするプロジェクトの成果物は、今後もアーカイブとして利用され、文化財の新鮮さを保ちながら多くの人々に届けられることが期待されています。
このように、東京国立博物館でのVR作品『洛中洛外図屛風 舟木本』は、ただの再上演ではなく、過去の文化を現代に繋げる重要な架け橋となることでしょう。