量子コンピューターの新世代へ
2025-09-09 12:20:26

量子コンピューター産業の未来を切り開く技術報告書が公開

量子コンピューター産業の未来を切り開く技術報告書が公開



国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所、日本電気株式会社が、富士通株式会社と共に、大規模量子コンピューターシステムに向けたロードマップと俯瞰図の策定を進めています。その第一報として、超伝導方式に関するサプライチェーンの技術報告書が発表されました。この報告書は、量子コンピューターの大規模化に向けた要素技術とその課題をまとめたもので、特に国内企業に対して量子コンピューター産業への新たな参入を促進することを目指しています。

技術報告書の意義とポイント


この技術報告書の中では、超伝導方式量子コンピューターのシステム全体に必要な要素技術や、大規模化に向けた具体的な開発要素が提示されています。量子コンピューターの実現には、周辺デバイスや部品、材料の高度化が必要ですが、現在の技術仕様がまだ不明確なため、多くの企業、特に中小企業にとっては参入の障壁が高いのが実情です。

報告書を通じて、技術仕様が明確化されることで、中小企業を含む広範な産業界の参入が促進され、安定かつ強靭なサプライチェーンの構築が期待されます。特に、超伝導方式に関する要素技術として挙げられる信号増幅器や高周波コンポーネントは、これまで主に日本企業が開発してきたものであり、今後も日本が中心的な役割を果たすことが期待されています。

量子産業における日本の強み


量子産業の発展には、国内の素材や製造業が持つ技術力が大きなアドバンテージとなります。報告書によれば、海外実績と比較して日本製の部品が多く使用されていることが示されています。約2年前の調査では、超伝導量子コンピューターの部品の多くが日本製であり、アメリカ製が次に続く形になっています。

このことは、日本企業の持つ技術に基づいた信頼性や性能が、量子コンピューターの開発においても生かされることを意味しています。しかしながら、現在の量子技術には高い参入障壁があり、新興企業の研究開発が難しい状況もあるため、報告書の公開はこれらの課題を解決する手助けとなるでしょう。

大規模集積化に向けた具体的なアプローチ


量子ビットの制御に必要なマイクロ波伝送技術は、その実装面積や熱負荷の関係で少なくとも一定の技術進歩が求められています。この技術報告書をもとに、国内外の企業や研究機関からの情報収集を行い、具体的な開発要素を洗い出しています。この取り組みは、1000量子ビット級の量子コンピューターの実現を目指したものです。

今後は超伝導方式以外の量子技術、たとえば光量子や中性原子技術に関する報告書も順次発表される予定です。これにより、さまざまな技術方式間での連携や、非量子産業からの転用可能性も検討されるため、より多くの企業が参入できる土壌が育まれるでしょう。これこそが、量子コンピューター産業のさらなる発展に貢献するのです。

まとめ


今回公開された技術報告書は、量子コンピューター分野の新たなスタート地点を示す重要な文書です。この報告書を基に、さらなる研究と企業の参入が進むことで、日本がグローバルな量子コンピューター市場においてリーダーとなる可能性が高まります。量子産業の未来に期待が寄せられる中、今後の動向にも注目が集まります。

会社情報

会社名
産総研
住所
電話番号

トピックス(IT)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。