急性冠症候群患者の地域医療連携が新たな展望へ
一般社団法人日本循環器協会(JCA)は、急性冠症候群(ACS)患者を対象とした地域連携クリニカルパスの調査結果を公開しました。この調査は全国47都道府県のJCA支部長の協力を得て行われ、医療機関間の連携体制・治療の実態を明らかにすることを目的としています。
調査の主な内容
調査により、全国で18の地域連携クリニカルパスが見つかりました。これに対し、県単位で導入されている県は11あり、全体の23%を占めています。地域単位での導入は4県(9%)となっており、地域毎に異なる状況が浮かび上がりました。
リスク因子管理の設定
多くのクリニカルパスが、LDL-CやHbA1c、血圧などのリスク因子の管理目標を設定している点も注目されます。運用が良好なクリニカルパスの特徴には、2022年以降に開始または更新されたもの、具体的な薬剤選択プロトコルが含まれるものが挙げられています。
今後の課題
調査結果を受けて、以下の課題が浮き彫りになりました。
1. 地域間の格差の解消
2. ガイドラインに基づいた治療プロトコルの標準化
3. 持続可能な地域医療連携体制の確立
これらの課題に取り組むことで、より質の高い循環器治療が期待されます。地域医療の連携体制の強化が重要な焦点となるでしょう。
期待される成果
今回の調査結果は、全国の循環器診療の質向上や患者の治療環境整備に貢献できると期待されています。JCAでは、今後も最新の調査・研究を通して循環器領域の発展に寄与する考えです。
識者のコメント
南 尚賢氏(北里大学、JCA評議員)は、「全国47都道府県のJCA支部長から100%の回答を得ることができた。本研究は、地域医療連携の改善に向けた重要なデータとなる。」と話しています。
また、
斎藤 能彦氏(奈良県西和医療センター)は、「ACSの再発予防には適切な薬物療法と医療機関間の連携が不可欠。本調査を土台に、全国統一版クリニカルパスの整備が急務。」と述べています。
小室 一成氏(国際医療福祉大学)は、「初めて国際学術誌に発表する研究が実現した。今後も研究成果を継続して発信し、循環器医療の発展に寄与したい。」としています。
用語解説
急性冠症候群(ACS)
心臓の血管が突然狭くなったり詰まったりする病気の総称で、心筋梗塞や不安定狭心症を含みます。これは早急な治療が必要な重要な疾患です。
地域連携クリニカルパス
患者の治療過程を地域の中核病院とかかりつけ医が共有して用いる診療計画表であり、医療機関間の連携をスムーズにするための重要な道具です。
医療機関・患者へのメリット
医療機関には、治療方針の標準化による医療の質向上や、情報共有の円滑化、重複検査の防止という利点があります。また、患者にとっても一貫した治療の実現が可能になり、再発予防に繋がると期待されています。
この調査結果は、今後の地域医療連携の改善に向けた一歩として、全国的な議論を促すことが期待されています。
本研究は、アムジェン株式会社からの助成を受けて実施されました。この調査結果は2025年1月28日に
Circulation Journalに掲載されました。