2025年3月1日、日本メドトロニック株式会社が新たに販売を開始した植込み型除細動器「Aurora EV ICD™ MRIデバイス」と「Epsila EV™ MRIリード」が注目を集めています。このデバイスは、心室性頻脈や不整脈の治療において革新的な選択肢として位置づけられています。不整脈は心臓の電気系統の異常によって引き起こされ、その中でも心室細動は特に危険な状態です。心室細動は、心臓が正常に拍動できず、数秒でめまいや意識喪失が起き、数分内に脳死に至る可能性もあるため、迅速な治療が求められます。
この新しいAurora EV ICD MRIシステムは、従来の経静脈型除細動器と比較して、低侵襲でありながら高い治療効果を示すことが期待されています。これまでの植込み型除細動器は主に血管内にリードを留置する方式でしたが、この新システムでは胸骨下にICDリードを配置することにより血管内の合併症リスクを大幅に低減します。また、自動的に心室性不整脈を検知し、電気ショックによる治療を行うことで、患者の生命を守ることができます。
心室頻拍は毎分100回以上の速い心拍が続く状態で、脳への血流が減少するため、めまいや失神を引き起こします。心室頻拍は時に心室細動に進行することがあり、それによる突然死を防ぐため、年間約4,000台の植込み型除細動器が新たに導入されています。この新デバイスの導入により、今後さらに多くの患者さんに安全で効果的な治療が提供されることでしょう。
国立循環器病研究センターの草野研吾先生は、このデバイスが患者への負担を軽減し、高い治療効果を発揮することを期待しています。具体的には、ATP(抗頻拍ペーシング)治療が導入されており、低いエネルギーで心室性不整脈を停止させることができるため、ショック治療を回避できる可能性があります。
新型のAurora EV ICDシステムには、他にもいくつかの優れた機能が備わっています。例えば、一時的な心拍停止に対するバックアップペーシングや、条件付きMRI対応など、従来型が持っていなかった新たな機能が追加されています。患者のQOLを維持しつつ、安全性を高めたこのデバイスの進化には目を見張るものがあります。
さらに、メドトロニックのカーディオバスキュラー部門の芳賀聡氏は、リードレスペースメーカや他の革新的な製品と並ぶ重要な製品としてこのデバイスを位置づけ、多くの患者さんに新しい治療の選択肢を提供できることに喜びを表しています。
今回のAurora EV ICD MRIシステムは、国内外における不整脈治療の新たな標準としての役割を果たすことが期待されています。最新の医療技術を取り入れたこのデバイスによって、心臓疾患に悩む患者さんたちに新たな光が照らされることでしょう。
メドトロニックは、設立以来、革新的な医療技術の開発を進め、多くの慢性疾患の治療に貢献しています。これからも新しい技術を通じて、人々の健康と生活の質を向上させることを目指しています。