企業の人的資本を未来へ導く新たなアプローチ
人事の未来を予測し、より良い組織を目指すためのシンクタンク「HR未来共創研究所」が、2025年6月23日及び7月2日に「人事エグゼクティブ・ラウンドテーブル2025」を開催しました。このイベントには、日本の多様な業界から20社以上の企業が参加し、人材管理に関する課題や解決策について議論しました。特に、企業価値の向上における人的資本経営の重要性が再認識されています。
人的資本経営の現状と課題
報告書によると、日本の上場企業においては、「PBR1倍割れ問題」が長期的な課題の1つとなっている状態です。この問題は、企業の無形資産へ対する評価が非常に低いことを示しています。人的資本経営は、投資家への情報開示から始まり、より深い価値創造へと移行する途上にあります。特に、どのようにして人的資本KPIを設定し、それを業績向上に結びつけるかが重要なテーマとして上がっています。
1. 講演の要点
岩本 隆氏による基調講演では、人的資本経営の重要性と無形資産の評価について深掘りされました。無形資産が企業価値に大きく影響を及ぼす一方で、日本企業が抱える「PBR1倍割れ」という現実が浮き彫りになりました。さらに、人的資本の開示を巡る政策動向や、実践するための「定量性・論理性・納得性」の三要素が紹介され、参加者は新たな視点を得ることができました。
2. 20社の取り組み
参加した企業は、業界別に様々な人的資本経営の取り組みを報告しました。IT、製造業、金融、小売、エンターテインメントなど、各業界の特性に応じたKPI設定の実情が明らかにされ、特に共通の課題として「KPI設定の形骸化」や「人材流動性の停滞」が挙げられました。
3. 組織内変革の挑戦
ディスカッションのセッションでは、「ナラティブ」の重要性が強調され、ストーリーの構築が心を動かす力を持つことが確認されました。また、サクセッションプランニングを起点にし、組織内変革を促す戦略が議論されました。人材の流動化に対するアプローチについても、グループ最適化や事業会社の囲い込みといった視点から活発な意見交換が行われました。
4. 外部環境への対応策略
日本社会が抱える構造的人材課題に対しては、特に人口減少や技術伝承といった観点からの戦略的対応が求められます。AIが進化する中で、人的資本経営も次第に変革を迫られています。これからの企業は、外部環境の変化に迅速に対応できる能力が必要です。
5. KPI設計の新たな指針
今後の人的資本KPI設定については、独自性が求められます。「インパクトパス」と「ナラティブ」という2つの要素が密接に関連しており、効果的なKPIを設計するための重要な指針となるでしょう。参加企業が実践した具体的なKPI設定が紹介され、実際のビジネスシーンでの応用が期待されます。
このように、「人事エグゼクティブ・ラウンドテーブル2025」は、人的資本経営の現状を振り返り、未来への展望を語る貴重な場となりました。変革を進めていくためのヒントが満載のレポートは、ぜひ参考にしていただきたいものです。今後、HR未来共創研究所は、さらに研究の深化を図り、企業が未来に向けた戦略を立案するための情報発信に努めていきます。