新たなリスク予測法
2025-11-20 10:40:49

機械学習で実現した2型糖尿病の生涯リスク予測法「SReFT-ML」の成果

機械学習による2型糖尿病の生涯リスク予測



千葉大学大学院薬学研究院の佐藤洋美准教授と樋坂章博教授を中心とした研究グループは、新たに機械学習技術を導入した慢性疾患の解析手法「Statistical Restoration of Fragmented Time course-Machine Learning」(SReFT-ML)を開発しました。この新技術は、これまでの数百人規模のデータ分析を一万人以上の患者データに拡大し、糖尿病治療における生涯リスクの予測が可能となりました。

研究の背景


慢性疾患の進行を理解し、患者個々の状況に基づいて適切な治療戦略を構築することは、特に2型糖尿病において極めて重要です。この病気は数十年にわたって進行し、患者の健康に多大な影響を及ぼします。しかし、従来の臨床試験は通常数年単位での観察にとどまるため、長期的な変化を追うことは難しいという課題がありました。

そこで研究グループは、長期間の疫学研究を行う代わりに、疾患進行の数理モデルを設計し、以前に開発したSReFT手法を基にしました。SReFTは独自の統計モデルを用いることで、疾病時間に伴う変化の解析を実現しましたが、計算負荷が非常に高く、大規模データには不向きでした。この課題を克服するため、研究チームはSReFT-MLを導入し、機械学習による計算効率を向上させつつ、より多くのデータ解析に適応させました。

研究成果


SReFT-MLは、米国の臨床試験リポジトリに登録されているACCORD試験のデータを用いて約1万例のバイオマーカーを分析しました。結果として、疾患時間に沿ったバイオマーカーの変化を精密に見積もることが可能となり、死亡率や合併症リスクの予測も実現しました。特に、腎機能の低下や心拍数の変化が、2型糖尿病患者の健康状態に与える影響を数値化することができました。

複数のバイオマーカーの変化は疾患時間に沿った一貫したパターンを示し、血糖コントロールが行われている患者とそうでない患者を区別することが可能になりました。

今後の展望


SReFT-MLの開発によって、観測されたデータから疾患進行をモデル化する手法が確立され、今後の治療法の開発や個別化医療の推進に寄与することが期待されています。この手法を通じて、慢性疾患患者の病状をより深く理解し、質の高い医療を提供するための新たな方針を示すことができると考えられます。

研究の意義


今回の研究成果は、米国臨床薬理学会の公式ジャーナルに発表されたのみならず、同学会が主催するコンテストで若手研究者としての評価も受けました。機械学習がもたらす革新が、今後の医療の在り方において重要な役割を果たすことが期待されています。これにより、将来的にはより効果的な疾患予測モデルや、個別化医療における新たな治療戦略が生まれるかもしれません。


画像1

画像2

会社情報

会社名
国立大学法人千葉大学
住所
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33 
電話番号
043-251-1111

関連リンク

サードペディア百科事典: 千葉県 千葉市 千葉大学 糖尿病 SReFT-ML

Wiki3: 千葉県 千葉市 千葉大学 糖尿病 SReFT-ML

トピックス(科学)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。