阿刀田高の90歳の一人暮らし
日本を代表する作家、阿刀田高さんが90歳を迎えた今、彼の新作エッセイ『90歳、男のひとり暮らし』が発売されました。これまでに900篇以上の短編小説を執筆してきた阿刀田さんは、また一つ新たな挑戦として、高齢者の一人暮らしに役立つ知恵や日常の愉しみを軽妙に綴っています。
老後の充実した日々
阿刀田さんは、数年前に奥様が介護施設に入居された後、今自宅での単身生活を送っています。彼のモットーは、「何事も〝まあまあ”でいい」。この楽観的な考え方こそが、日々を穏やかに、そして楽しむ秘訣かもしれません。
本書では、食事はシンプルに調え、余分な手間をかけずに栄養をしっかり取る工夫が紹介されています。料理の手抜きは、阿刀田さん自身も実践している方法です。また、落語は「読む」ことで楽しむという新たな視点も示されています。落語の軽快なリズムとユーモアに親しみながら、老後の楽しみを見つける様子が描かれています。
老いを前向きに受け止める
阿刀田さんは、老いることによるさまざまな変化を受け止め、「老いてこそユーモア」という信念を持っています。年老いた身体や心の変化を軽妙な筆致で表現し、自身の経験を通じて他者に指針を与えることを目的としています。読者は、彼のエッセイを通じて老いに対する柔らかな視点を得ることができるでしょう。
さらに、夜が眠れないときには『源氏物語』や百人一首を数えて心を落ち着ける方法や、時には亡き人たちを思い出すことで心を癒やす様子も語られています。こうした心の整理の仕方は、私たちが老後を迎える際に忘れてはいけない重要なポイントです。
知恵と経験から学ぶ
本書には、様々なテーマが扱われています。「駄目駄目ショッピング」や「税金とのつきあい」といった実生活に根ざしたトピックが豊富に含まれており、老後を支える実用的な知恵も学ぶことができます。このようなエッセイは、ただの読み物ではなく、生活に役立つ具体的な指針が詰まった珠玉の内容です。
また、著者である阿刀田高さん自身の人生の軌跡に触れることで、読者はより深く彼の考えに共感することができるでしょう。彼が辿ってきた道、選択してきたこと、それら全てが、このエッセイの中に息づいています。
結論
『90歳、男のひとり暮らし』は、ただのエッセイにとどまらず、老後の参考書とも言える一冊です。阿刀田高さんの軽妙な文体に触れながら、楽しく学び、日常に活かせる知恵を手に入れることができます。新潮社からの発売をぜひお見逃し無く!
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