名古屋大学が進行胃癌治療に向け新薬ASO-4733の臨床試験開始

胃癌治療に向けた新たな挑戦：ASO-4733

名古屋大学医学部附属病院で、進行胃癌に特化した新薬「ASO-4733」の臨床試験がスタートしました。この薬は腹膜播種をターゲットにしたアンチセンス核酸医薬品で、特にがん細胞の増殖を抑制することを狙っています。具体的には、腹膜に特異的に発現する分子である「SYT13」を標的とし、がん細胞に直接作用することで、治療効果を高めることを目指しています。

研究の背景

日本におけるがんの主要な死因の一つが胃癌であり、その中でも腹膜播種は特に難治性の問題です。この段階での標準治療である全身的化学療法では、効果的にがん細胞にポジティブな影響を与えることが難しいという課題があります。この背景を受け、腹膜に直接投与する新たなアプローチとしてASO-4733が開発されるに至りました。

新薬ASO-4733の開発

ASO-4733は、独自の製剤設計によって高い薬剤濃度を維持し、特定のがん細胞を狙い撃ちします。腹腔内に投与することで、全身投与では難しい効果を得ることが狙いです。研究グループは、名古屋大学の神田光郎教授や大阪大学の小比賀聡教授と連携し、この新しい治療アプローチを進めています。

この治験は、治療の安全性や用法・用量の最適化を目的としており、既に優れた安全性プロファイルが確認されています。実験結果によると、他の遺伝子への影響が非常に少なく、高用量を用いても重篤な副作用は認められませんでした。

臨床試験と今後の展望

本治験はAMEDの支援を受けて実施され、ASO-4733の忍容性を評価し、最大耐用量を決定するための重要なステップです。この臨床試験は、胃や食道のがんに限られ、特に難治性の症例に対する新たな治療条件を整えることを目指しています。

さらに、SYT13発現の評価を含むバイオマーカー研究も進行中で、将来的には治療効果の予測が可能なバイオマーカーの確立に繋がると期待されています。