シンガポール国立大学が始動する新たなベンチャー支援プログラム
2023年、シンガポール国立大学(NUS)の起業支援部門であるNUSエンタープライズが、アジア初のベンチャーキャピタル支援プログラム「NUS VCプログラム」を発表しました。このプログラムには、総額1億5,000万シンガポールドル(約1億1,600万米ドル)が拠出され、厳しい投資環境においてテクノロジー系スタートアップへの支援が期待されています。
アジアにおける投資環境の現状
近年、アジア全域でベンチャーキャピタル投資が急減しており、特に2022年から2023年にかけてのデータでは、日本国内のスタートアップへの投資額が前年比26%減少するなど、企業の成長を支える資金調達が難航しています。この流れは特にディープテック分野において顕著であり、企業の資金調達に対する厳しい現実が明らかになっています。
「NUS VCプログラム」の創設背景
「NUS VCプログラム」の立ち上げは、こうした環境下で厳しい資金調達やメンタリングの不足に直面するテクノロジー系スタートアップを支援することを目的としています。特に、NUSエンタープライズに所属する研究成果を基にしたスタートアップに対する支援を強化し、グローバル市場で競争力を持つ企業への成長を促す狙いがあります。
このプログラムは「National Graduate Research Innovation Programme(National GRIP)」から派生したものであり、研究室の革新的技術を市場に展開するための能力をイノベーターに提供します。
プログラムの特徴とは
1. ディープテック投資への出資
NUSエンタープライズは、今後3年間にわたり、アーリーステージにおけるディープテック投資実績のあるVCに5,000万シンガポールドルを出資することを決定しました。これにより、ディープテックスタートアップは、専門知識やネットワークのアクセスを通じて、効果的な成長支援を受けることができるようになります。
初期のVCパートナーには、「Granite Asia」と「4BIO Capital」が名を連ねており、彼らの豊富な経験とネットワークが新たなスタートアップに貢献することが期待されています。
2. 共同投資によるサポート
さらに、NUSエンタープライズは1億シンガポールドルを確保し、これらのVCパートナーとの共同投資を行う計画です。これにより、NUSに関連するディープテックスタートアップに対して、資金を円滑に供給することが可能となります。
研究から市場への移行を加速
NUS VCプログラムが目指すのは、研究から市場への移行を加速することです。スタートアップは初期段階において特有の課題を抱えており、このプログラムはその成長ニーズに的確に応えるものとなります。NUSは、すでに「National GRIP」によるシード資金支援を行っており、「NUS VCプログラム」によりさらなる成長を促すための戦略的支援が提供されます。
理念と期待
NUSエンタープライズの関係者は、このプログラムの価値を高く評価しており、特にディープテックがグローバルな市場で注目される中、シンガポールから新たな革新が生まれることを期待しています。NUSは、資金だけでなく、戦略的なパートナーシップや専門的な知識を結集することで、研究室から市場への道のりを強固にし、持続可能な成長を目指します。
多くのスタートアップが初期段階での技術革新と実社会での実装に苦しんでいる中、「NUS VCプログラム」は不可欠なサポートを提供します。
NUSエンタープライズの紹介
シンガポール国立大学(NUS)は、アジアを代表する教育機関の一つとして、学際的なアプローチで産業界や政府と連携し、さまざまな社会課題の解決に取り組んでいます。NUSエンタープライズは、こうした取り組みの一環として、起業支援やイノベーションの推進に努めています。