ドローンを活用した鉄道保守の新たな運用モデルを構築
株式会社アイ・ロボティクスは、鉄道保守業務の効率化と安全性向上を目指し、西日本旅客鉄道株式会社 敦賀保線区と連携して新たなドローン運用モデルの構築及び実証を行いました。この取り組みは、単なる技術導入にとどまらず、実際の現場フローに即した「共創型プロジェクト」として進められました。
ドローンの導入背景
鉄道業界では、保守業務において人手不足や作業の属人化、さらには品質の平準化と安全確保が常に課題となっています。従来、技術導入が進められる中でも、現場での実運用が十分に考慮されていないことが多く、結果として効果的な活用に繋がっていませんでした。そこでアイ・ロボティクスと敦賀保線区は、「現場と共に設計し、試す」アプローチを重視し、実際の業務に即したドローン活用を模索しました。
実施した具体的な取り組み
1.
遠隔操作型ドローンポートの設置
実証現場にドローンポートを設置し、定期的な自動離着陸と巡回飛行を行いました。このことにより、作業員が現場に常駐することなく、点検や散布といった業務を効率的に実施できる仕組みが築かれました。
2.
除草剤の空中散布実地検証
中型農業用ドローンを用いて、沿線の雑草が繁茂しやすい区間で除草剤の空中散布を行いました。作業の安全性と精度を評価し、薬剤の飛散抑制などの観点から効果的な方法を探索しました。
3.
動物忌避剤の空中散布に関する調査
敦賀エリアでは、シカやイノシシによる獣害対策として忌避剤の導入可能性を調査しました。実際には散布を行わなかったものの、現場環境や法的観点からの課題を整理し、今後の実務に向けた方向性を探りました。
4.
作業体制の最適化
ドローンの活用により、従来5人以上を必要としていた散布作業をわずか2人で行える体制を構築しました。これにより、作業の再現性が向上し、人員負担も軽減されました。
5.
安全運用の確保
本プロジェクトでは、関連法令に基づいた運用設計が徹底され、飛行区域の安全標識や、住民への説明、緊急時対応のプロトコルが整備されました。その結果、実証期間中に事故やトラブルが一切発生しなかったことが安全管理の有効性を示しています。
今後の展望
アイ・ロボティクスとJR西日本 敦賀保線区は、今後さらに以下の課題に取り組む計画です:
- - ドローンポートの常設運用に向けた耐候性や遠隔監視機能の強化
- - 複数のドローンを使った自動散布の連携制御
- - 飛行ログや散布記録の自動化
- - 夜間飛行やGPSが使えない環境での対応
また、地域ごとの地形や植生に応じた散布設計を含む共同対応を進めるため、他の鉄道事業者との連携体制を強化していきます。
まとめ
今回のプロジェクトは、鉄道保守を持続可能にするための新たな指針を示しました。ドローンの活用が効果的に行われることで、人手不足や作業の属人化といった課題の解決に向けた一歩が踏み出されています。アイ・ロボティクスは、これからも鉄道現場に寄り添いながら、共に成長していくことを目指してまいります。